アカペラアレンジしよう(03/8/23)


編曲ネタに関しては、以前も「私流、合唱編曲法その1その2」などで書きました。多少重複することもあるかと思いますが、もう少し少人数アカペラに限って、編曲の話を書いてみましょう。

アレンジをするとき、出版などを意識した汎用的なアレンジであることはほとんどなく、実際には自分の仲間で歌うため、つまり歌い手の顔を良く知っている場合がほとんどと思われます。たいていはプロ相手ではありませんから、なるべく簡単にアレンジすることが重要なことになるのですが、歌い手がわかるからこそそれほど簡単でなくても良い可能性だってあります。
実際のところ、アレンジ初心者の作る楽譜のほとんどの問題は、難易度の設定の概念が欠けていることだと私は思うのです。
難易度の設定などというと、自由な音配置に制限をかけられるような感覚があり、また商業的なイメージもあるので、一般には良いイメージはないかもしれませんが、演奏の出来に大きく左右するわけですし、私としてはそれらを含めてアレンジの能力の一つだと考えていいと思います。
難易度といっても、単純に「簡単に」「難しく」といった二方向しかないわけではありません。歌い手の音楽の方向性などにも依存するかもしれません。クラシック系には強いけれども、テンション音の音取りがなかなかうまく出来ない人とか、伸びやかな声質にそれほど恵まれていないけれどリズム感は良いとか、メンバの特性によってアレンジの方向性も変わってくるかもしれません。

難易度の設定方法、というのを具体的に考えてみましょう。
一つはテンション音の入れ具合。流行のアカペラっぽくやりたければ、ジャジーな和音を歌ってみたくなるというもの。そうなると、必要に応じて気持ちのいいテンション音を忍ばせたくなります。最近のアカペラ合唱曲でも、テンション音が多くなっているように思いますが、テンション音がはまるスイートスポットというのは結構狭くて、なかなかきれいなハモリを聞かせられる演奏は少ないものです。
従って、調子に乗ってたくさんテンション音を入れることのないように心がけるのが大事。(←かなり自分自身に言い聞かせている)
私自身の基準では、決めの和音の9thくらいまでなら、たいていのアレンジで入れてもいいかなと思います。maj7th は時と場合によります。長い音価では避けた方がいいかもしれません。経過句の中で現れるくらいが気持ち良さそうです。
同様に長い音価でなくて、流れの中ならある程度許されるのは、13th, -5th、-9th、mmaj7th くらいでしょうか。ブルース風になる +9th は素人アカペラにはまず無理。これらのテンション音も、音価の長い音符に使うには、歌い手の実力に応じて対応すべきでしょう。
難易度とは決して音取りの問題だけではありません。例えば、音を簡単にしてあげようとして同じ音を連続したりすると、逆にピッチが下がる原因になったりもします。スケール内なら多少音を動かした方が効果的な場合もあるでしょう。
ポピュラー風にすると、リズムを口三味線で歌うようなことも度々あります。ここはさらに注意が必要。私の経験上、ほとんど16ビート系の口三味線は失敗します。16分音符や、8部音符で真っ黒になった楽譜というのは、たいていの人がひいてしまいます。ほんとはもう少し合唱系の人も、リズムに対して強くなって欲しいものですが、それはまた別問題。
また、マイクを使ったアカペラでないと、16ビート系のするどいリズム感を歌で表現するのは難しいかもしれません。しかし、最近のかっこいい曲って16ビート系って多いんだよねー。(最近だとSMAPの「世界に一つだけの花」とか、たくさん編曲されていそうだけど・・・)
もう一つ言うなら、音域の問題。これは歌えない、という音域が誰にでもあります。特に歌い手の顔が見えるのなら、これは十分ケアしてあげたいところです。表現を変えて言うなら、あの人にこの音域で歌ってもらいたくないとか^^;。恐らく、アカペラアレンジで最も気を使うのはこの音域のことかもしれません。自分の表現したい音楽のために、歌手に無理な音域を強いるのは、決して優れたアレンジとは言えないと思います。


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