音取りの技術の訓練法(03/8/16)


これまでも音取りの話を何回かしてきたのですが、改めて音取りを技術として捉えて、合唱団内でその音取り技術を磨くという必要性を感じています。
音取りのスピードは個人差がありますし、曲の難しさにも依存します。団員が多いほど、練習での音取り効率は安定してきますが、一人一人がきちんと取れているかは逆に怪しくなります。ところが少人数合唱団の場合、なかなか音取りが出来ないパートがあると練習が滞りがちになります。
オーケストラみたいに合わせの前に個人で取っておけ、というのは、これまでいたるところで言われてきたことですが、未だにそのような慣習が定着している合唱団を見たことがありません。残念ながら、合唱団において音取りは一人では出来ないというのが一般的な常識と言えるかもしれません。

音取りは早いに越したことはありません。だから、音を取ることを早めるための方法というのがもっと研究されても良いと思うのです。もっとも、ほとんどの人が薄々気付いているように、音取りの技術が、その人の音楽体験(履歴)や音楽レベルに依存していて、一朝一夕に技術を上げるというのは難しいのは確かなことです。しかし、それでも何らかの指針があれば、多少は良くなるかもしれません。

以前もこの話を書いたときに、音取りが早い人のパターンを類型化しました。
私自身は移動ド&調性感じ型で音を取っています。従って、私自身がコツを語るとすれば、この方法によることをご承知ください。
それでこの方法というのは、音楽理論に多少首を突っ込まざるを得ません。多分、これが最大の(心理的な)難関なのだと思います。それほど大した量の理論でないのに、音楽理論というだけで抵抗を感じる人が多いのです。
ここで必要な理論とは「調性を判断する」ためのものです。
単純な曲ならば、調号を見れば調性はわかりますし、むしろそのような曲で音取り技術を磨くのがこの方法の王道でしょう。少なくとも、調号を見て、この曲の移動ドの「ド」の音がどこにあるかわかるようになる、ということは最低限必要な技術です。これは私が具体的にここに書くまでもないので、何らかの本を読んで勉強してください。

今回は、上記のような抽象論だけでなくて、移動ド技術を上げる具体的な訓練方法を二つほど挙げてみましょう。
その1 流行り歌を移動ドで歌う
実はこれ、うちの夫婦で時間潰しに良く遊んでます^^;。私が出題者で妻が回答者にしかならないのですが、妻は絶対音的に音を取るタイプなので、結構移動ドで歌えないのです。ヘタをするとト長調のままで一曲全部歌ってしまったりします(そのときは、「何でソで終わるんだよー」とか言って突っ込む^^;)。
しかし、この訓練は結構重要な音楽的ノウハウを与えてくれるはずです。例えば、曲の終わりは「ド」が多いとか、そういう比較的単純なことなのですが、これが各階名(「ドレミファソラシ」)の持つ役割を身をもって知ることにもなるのです。
これは、楽譜にある音符を見てすぐその音を歌えるようになるための直接の方法ではありません。階名、つまり移動ドに親しむために、階名->メロディ、という方向だけでなく、メロディ->階名、という方向で、その相互関係を頭に叩き込もうという訓練なのです。

その2 バッハのコラールをひたすら移動ドで音取りする
バッハ研で歌っていたときに思ったのですが、バッハのコラールは音取り技術を高める良い課題の宝庫です。ほぼ例外なく、単一の調性で書かれていて、それも調号を見ればその調性はわかります。しかし、それでいて時折移動ドでも#やbがたくさんついたり、かなりの跳躍があったりと、音取りが難しくなる要素も適度に散らばっているのです。
コラールばかりが集まっているような楽譜があればいいのですが、そういうのがあるか良く知らないので、具体的には「マタイ受難曲」とか「ヨハネ受難曲」のような大曲の楽譜を買って、その中にあるコラールを片っ端から移動ド読みしてみましょう(なお、ロ短調ミサにはコラールはないので注意)。

いずれも実践ではなく、訓練方法ではあるので、なかなか暇をみてやる気にはならないかもしれませんが、どんな技術の習得も簡単ではないとあきらめて、是非やってみることをお勧めします。



inserted by FC2 system