気になるカタカナ英語(99/10/24)


以前も書いた話題ですが、また少し視点を変えてみます。
あるカタカナ英語が流行語として世の中に広く蔓延することがあります。
最近なら、「リストラ」。これはカタカナ英語であるというだけでなく、 日本語的に4文字に省略されてしまっているという二重の変形を受けています。そもそも、リストラクチャリングというのは、単に再構築という意味しかないのですが、会社の経営の建て直しの代名詞になり、果ては人員削減の代名詞になってしまいました。
この言葉が流行する心理の裏には、日本語で「人員削減」と呼ぶとあまりに単刀直入でとりつくしまもないのですが、「リストラ」ということで、 言葉の力が曖昧になり、婉曲に表現できるということがあるのではないで しょうか。
そもそも、日本人は単刀直入にものを言うのが苦手な民族だと思います。 持って回ったような表現や、自分をへりくだる謙譲語などそれを感じることがよくあります。カタカナ英語が氾濫するのは、英語を使うとなんとなくかっこいい感じがするのと同時に、日本語の直接的な意味を覆い隠すためではないか、と私は思うようになりました。
とすると、結局は日本的婉曲表現の幅を広げるために外来語が使われているに過ぎず、日本が国際化したわけではさらさらないというふうに感じてしまいます。

勝負の世界では「リベンジ」なんて言葉が流行っています。
まあ、使っているほうとしては、「今度は絶対負けないぜ!もう一回勝負だ」てな感じでしょうが、日本語に訳して復讐なんていうと、かなりやばい雰囲気になりますね。
心理的には過激な言い方をしたいけど、日本語だとさすがに直接的になってしまう場合、やっぱり英語にするのがなんとなく好都合です。
しかし、そう考えると日本語というのはなんとも懐の広い言語ではないですか。カタカナという武器で、外来語をなんでも日本語化してしまえるのですから。

今職場では「モチベーション」という言葉が流行っています。
上司に対して間違っても「今、やる気がありません」なんて言えませんが人によってはさりげなく「今、モチベーションが下がってるんですよね」 なんて言えたりします。
これなんかも、同じような内容を婉曲に、しかも主観的な表現から客観的な表現に転換しているような感じを受けます。
これによって言われたほうも、「彼らのモチベーションが下がっている原因はなんだろう」などと殊勝にも考え出すから不思議です。

これだけ英語が氾濫すると、いつか公用語が英語になるかも、なんて思っている人がいるかもしれませんが、こういう理由で英単語が借用される限 り本当の英語は日本には定着しないような気がします。



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