MIDIを使う -フランジング問題-(04/3/6)


MIDIで打ち込みをするときの具体的なテクニックについて、ちょっと書いてみます。
興味のない人は多いとは思うけど、私は音楽活動を続けるならMIDIを知っていると結構便利だと思っています。これは単に日ごろの音楽活動の中でMIDIを活用するということだけでなく、打ち込みをやっていると、漠然と感じていた音楽性の良し悪しに、数値的な指標を感じることが出来るようになるのです。これって、理系的に音楽を解析したいと思う人にとって、なかなか興味深い経験だと思うのです。

例えば、6/8拍子の曲を楽譜どおりにベタ打ちしたとします。まずは音楽性も何もないつまらない音の羅列です。
次に、1拍目と4拍目の音を少しだけ大きくします(ヴェロシティ値を上げる)。そうすると、少し6/8拍子のリズム感が出てきます。さらに、このリズム感を極めようとするなら、1拍目、4拍目の音符を少し長めに(後ろにだけでなく、少し前のめり気味にも)設定します。もちろん、その分、他の音符は縮まります。
これ、真面目にやるとかなり気が遠くなるような作業ですが、ここまでやればMIDIの表現力は格段にあがるでしょう。ここで得た教訓は、実際の演奏の場で実践することにより自分自身の音楽性も高まるかもしれません。

MIDIで音楽性を高める話題はきりがありません。
また、思いついたときにでも書きますが、今回はフランジング問題について紹介しましょう。
MIDIで打ち込みした人なら経験あるのが、このフランジング問題。
例えば、合唱の打ち込みで、ソプラノとアルトがユニゾンである場合、ソプラノで打ち込んだデータをアルトにコピーすれば、簡単にデータ作成ができます。このとき、ソプラノとアルトを別音色で設定してあれば問題ないのですが、MIDI上で全く同音色に設定すると、ユニゾンで分厚くなるはずの音が、なぜかシュワシュワしたり、パワー感のないふ抜けた音になってしまうのです。
全く同じ音が同時に出るのなら、音量も2倍になって良いはずです。普通はそう思うのですが、ここに電子音ならではの悲しい宿命があるわけです。
原因は二つあります。一つは、シーケンサのデータ上で同時に発音するように設定されていても、実際には同時に発音していないという問題。ソプラノパートの発音情報と、アルトパートの発音情報は、音源に別々に送られてきます。現在のMIDIの転送レートでも 1msec 程度の遅れがあるし、また音源の発音処理スピードによっては、もう少し発音時間に差が出ます。
もう一つの原因は、同じ音色だと、電子楽器なら全く同じ波形を出すという当たり前の事実があります。
これら二つの原因を合わせると、全く同じ波形を少しだけずれたタイミングで発音することになるわけで、このとき特定周波数帯域で波形の干渉が起こってしまうのです。なぜ起こるかは、まあここでは置いておきますが、これは電子楽器ならではの問題と言えるでしょう。

この問題に対する決定的かつ簡単な方法はありません。上の6/8拍子の例のように、涙ぐましい努力で、このフランジングを少しずつ取り除くしか手がないのです。
どのようにして取るかというと、微妙な発音の遅れはどうしようもないので、音色を少し変えたり、ユニゾンであっても、微妙に発音タイミングを変えたりして、データをばらけさせるという地道な作業を行うのです。単純にばらけさせただけでは、フランジングの度合いがしょっちゅう変わるだけで本質的には変わりません(ただし、かなりずらしても音楽的に問題なければ、これも効果的です)。これにプラスして、フィルターで音色の度合いを変えたり、ピッチを微妙に変えてあげたりします。
私の場合、昔はそこまで気合を入れたりしてましたが、最近は面倒で、例えばアルトパートにはコピーせず、ソプラノの音量を少しだけ大きくするなどしてました。ただ、こうすると楽譜情報とMIDIデータが同一でなくなり、例えば、音取りテープの作成などでは逆に不便になってしまいます。
最近は、フランジングももうどうでもいいや、というちょっと投げやりな感じになってきました。(^^;
ちなみに、ものすごい単純で、かなり効果のある方法が一つだけあります。全部、リアルタイムで手弾きで録音するのです。これなら、データは不揃いになるのでかなりフランジングは防げますが、弾けるくらいなら打ち込みなんかしない、という突っ込みはあるかもしれません。

この問題って、意外とメーカー側が本腰で対応しているとは思えないのです。
音源側で対策するのは難しいとしても、シーケンサーの機能で、フランジング対策用の機能とかあればいいのに、とか思ってしまいます。



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