びわ湖ホール声楽アンサンブルのコンサート(02/9/23)


21日土曜日に行われたびわ湖ホール声楽アンサンブルの定期公演を聞きに行ってきました。びわ湖ホール声楽アンサンブルの存在は聞いていてはいたものの、今回彼らのコンサートを初めて聞くことが出来ました。
「びわ湖ホール声楽アンサンブル」は、日本で唯一の公共のプロ合唱団。プログラムの紹介では以下のように書かれています。
《びわ湖ホール独自の創造活動の核として、1998年3月に結成された。公共ホールが”専属”という形で実現させるのは日本では初の試みです。ソリストとしての実力を持ち、かつアンサンブルにおいても、大合唱のリーダー役としても活躍できる人、という厳しい基準をクリアして入団してきたメンバーたちのレベルの高さは、全国から熱い注目を集めています。》

この日のコンサートは、第一ステージがロッシーニの合唱(重唱?)小曲集、第二ステージがバンキエーリのマドリガルコメディの二ステージ構成。
率直に言えば、一ステージのロッシーニの合唱曲は、私にとって曲自体があんまり面白くありませんでした。もともと、私の好みでない時代の音楽だったし、どの曲も派手でクサく終わる感じで少々辟易としてしまったのは確か。もちろん、ロッシーニですから、オペラ的世界が好きな人、オペラ合唱の圧倒的な迫力を楽しみたい人には良かったのかもしれません。合唱でなく、ソロの曲も2曲ほどありましたし。これは、やはりこの合唱団がオペラをバックボーンに活動していこうとしている表れでもあるのでしょう。
第二ステージは面白かった。バンキエーリのマドリガルコメディは初めて聞きましたが、組曲形式のマドリガーレとでも言うべきものです。今日の演目は「ヴェネツィアからパドヴァへの連絡船」という曲で、船が出発してから到着するまでの様々な人間模様を時系列で描いたものです。お客を楽しますための要素も多く、やはりこの時代の声楽曲のエンターテインメント性には注目すべきところが多いことを実感。
この日のコンサートでも、プロの語りの方を入れ、各曲の内容を演劇的要素を交えながら日本語で語り、ステージは進行します。合唱団員もやはりオペラで活躍されている人も多く、一人一人の所作がツボにはまっていて、ステージ全体の演出がプロらしいエンターテインメント性に溢れていて、観客として十分楽しめました。これなら、合唱好き、古楽好きでなくても、楽しめるステージだと私は思います。

さて、演奏のほうですが、オペラで活躍している人たちの声楽家アンサンブルということで、合唱団の実力にとしては一抹の不安を感じながら聞き始めましたが、なかなかどうして、良く声が合っていて合唱としても十分な出来だったと思います。もちろん、その圧倒的な声量とハリハリ感は、アマチュア合唱団には望むべくもなく、16人でこれだけのボリュームを出せるというだけで稀有の存在といっていいでしょう。
一ステージでも、二ステージでも、ソロで歌う箇所がありましたが、私の聞く限りソロ部分と合唱部分はかなり歌い分けを意識していたように思います。合唱を歌うときは合唱モードでしっかりアンサンブルをしようとしている様子が伺え、指導陣も合唱としてのアンサンブル精度を要求している様子が伺えました。
個人的に気になったのは、マドリガルのキメの和音のピッチ精度。第三音がちょっと浮き気味に感じる箇所が散見されました。もう一つ、カウンター一人と女声二人によるアルトパートの音質がちょっと奇妙。かなり頑張っているとは思いましたが、あれはカウンターというよりは細めに作ったテナーの声で、この時代のアルトパートとしてもう少し研究の余地があるように思います。
あと、どうでもいいことですが、指揮者の本山さんは少々振りすぎかなあ、と感じてしまいました。

概してソリスト系の人を合唱というアンサンブルの枠で縛るのは往々にして難しく、それに果敢に挑戦している様子が伝わり、方向性としては評価できるものの、逆にアンサンブルの精度の高さに捉われて曲の表現力にまで突っ込めていないような不満を感じました。ありていに言えば、どの曲も同じように聞こえてしまいました。曲のせいもあったのかもしれません。
出来ればもっともっと純然たる合唱曲を演奏して我々を楽しませて欲しいところですが、やはりオペラというバックボーンから離れないのが彼らの存在意義だとするならば、それは望むべくもないのかもしれません。今後の活躍を期待したいと思います。



inserted by FC2 system