コンピュータ浄書で大事なこと その2(02/7/20)


コンピュータ浄書の話の続きです。
楽譜ソフトの必要な機能について、もう少し書いてみましょう。
そこまで出来なくても・・・と一瞬思われてしまうけど、やはりこれは落とせない、という細かい話があります。例えば、音符の旗のつなぎは、少なくとも不特定多数の人に見せるつもりの楽譜ならば、完全に制御可能になっていなければいけません。しかし、一口に音符の旗のつなぎといってもこれは深いテーマなのです。まず拍子の問題があります。一般的な拍子なら、楽譜ソフトはたいてい指定できますが、どこまで任意の拍子の指定ができるかというのが一つのポイントです。
一般的な拍子以外のものを、例外扱いするようなソフトではいけません。少なくとも、分子側は任意の数字に出来るというのは最低条件。さらに分子側を足し算の形で表記できる(例えば2+3+3とか)、また小数点を使うことができる、なども(少なくとも私の場合は)必須です。そして、これらの任意の拍子について、しかるべき旗のつなぎに自動にならなければいけません。さらに、それが出来た上で任意に旗のつなぎを自由に変えられることも必要です。特に声楽曲の場合、音節の分け目を旗の分け目で表記することもありますので。
今のところ私の曲ではそういう曲はありませんが、拍子関係でここまでは普通出来ない、という機能があります。それは、パートによって同タイミングで拍子が違うというような表記の機能です。さすがに、この機能は私が今まで使った楽譜ソフトではどれ一つとして出来る物はありませんでした。もちろん、こんなことは相当な現代音楽系でもないとしないことですが、それでも6/8と3/4を同時に別パートにアサインするというのは無いこともありません。実は、楽譜ソフトが出来ないからこういう曲を書かない、という隠れた心理もあったりして、やはり道具は思考を左右する、ということはありそうです。
旗のつなぎとくれば、旗の上下です。これは前回言った声部の問題と絡んできます。通常は第3線より上ならば旗は下向きになりますが、一つの段に二つのパートを書く場合、高いパートは旗は上向き、低いパートは旗は下向きになります。ただし、二つのdiv.パートが同じリズムのままなら、旗はまとめてしまう場合も多いです。そうなると、同じ段上にある音符を、自由に声部を変えるようなことが出来なくてはいけません。少なくとも、この機能はある程度の楽譜を出そうとするなら絶対に必要なものだと私は思います。

あと、一見つまらない問題に思えて意外と作業効率に響くことがあります。
音符以外の音楽情報が何に帰属するかという問題です。例えば、ある小節にmfを書いたあと、ページの配分をちょっと変えて小節が全体的にずれたとします。このとき、mfという記号も一緒に動いてくれないと困ります(それができなきゃ、楽譜ソフトとは言えませんよね)。つまり、このmfという記号は、小節あるいは音符に帰属している、という方法でファイルに記録されるはずです。
mfならそれほど面倒ではありませんが、よくある問題はクレシェンド、ディミニエンドの松葉マークです。前使っていたMosaicでは、松葉の最初と最後が必ず音符に帰属する、という形になっていて大変苦労しました。だって、一つの音符を伸ばしている間にクレシェンド、ディミニエンドする場合だってあるはずです。なんとか無理矢理形を整形して上手く見せましたが、ちょっと小節割りが変わったりすると、そういった調整が崩れる場合があり、面倒な作業を繰り返すはめになりました。
今のCubaseの不満の一つに、フェルマータは音符にしか帰属できない、という問題があります。休符にフェルマータを付けたり、小節線にフェルマータを付けたりできないのです。こればかりはどうしようもなくて、プリントアウトした紙に手書きでフェルマータを付けてます。私の場合、今のところ最終原稿は必ず紙にするので、とりあえずはなんとかやってますが、楽譜の完全電子データベース化にはこういう理由で私には出来ないのです。

楽譜ソフトを使ったことのない人はおそらく、普通のお絵かきソフトみたいにいろいろな音楽記号を好きな場所に書ける、と思っていることでしょう。しかし、様々な記号を音楽的に扱おうとすると却って好きな場所に置けなくなるという制約が生まれてくることがあるのです。それをさらにいろんなことが出来るようにすると、楽譜ソフトの使い勝手はどんどん悪くなっていきます。
実際のところ、Cubaseは実に使い辛いのです。特にこれは、MIDIと楽譜を連携させる、という非常に難しいことをやろうとしているからです。しかし、Cubaseは楽譜を書く人の気持ちをあまり汲んでいないようにも思えます。後で取ってつけたような設定画面が多くて、これとこれはまとめてくれると分かりやすいのに・・・と思うこともしばしばなのです。まあ、自分が選んだので、文句をいっても仕方がありませんが、でも、何とかして欲しいことがたくさんあるんですよ。


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