合唱の必要アイテム 音取りの楽器篇(02/4/6)


音取り用のキーボードについて掲示板で静かに盛り上がっているので、今回はそれについて思うことなど。
たいていの合唱団では、練習室にピアノが置いてあって、それを利用して音を取っているのが一般的でしょう。ときどき練習の効率を上げるためにパート練習などをした場合、楽器のある部屋がなくてポータブルの電子楽器を利用することがあるかもしれません。
ハモリの精度に意識の高い合唱団なら、某社のハーモニーディレクターを練習に用いているかもしれません。ただ、一般に音律を歌い分けるようなピッチ精度は必要ないと私は思うわけで、そう考えるとハーモニーディレクターはハモる和音と平均律との違いを一回聞かせてあげるくらいの効用しか感じられません。それに音が貧弱なのと、新型は音量が小さいというのが良くないですね。開発者の一人が同じ職場団体で歌っているからあんまり大きな声では言えないけど、多くの人はそう思っているのではないでしょうか。でも作る側に言わせると、やっぱり数が出ない機種というのはいろいろと難しいんですよ。(といきなり製造側の肩を持つ)

ではピアノでの音取りはどうでしょう。
ピアノはたいていの音楽練習室には置いてあるし、なんといっても音がでかいのがメリット。内蔵スピーカーの電子楽器なんか全然目じゃありません。大合唱団では恐らくピアノに勝る音取り楽器はないでしょうね。
ピアノは平均律だから、などと言う人ももちろんいますが、先も言ったとおりそこまでピッチ精度にこだわるほどのレベルの高い団体というのはそうそうないでしょうから、私にとってはたいした問題ではありません。むしろ、ピアノというのはストレッチチューニング(高い音ほど音が高くチューニングされ、低い音ほど低くチューニングされる)とかもあるし、打鍵時と減衰時のピッチがかならずしも同じではないわけで、平均律だけを云々する前に完全なピッチ精度は元から期待する必要は無いのです。(何度もいうように、合唱団員のピッチ精度はピアノを批判するには申し訳ないほど悪いハズ)
しかし、私がピアノで音取りをする際、ピアノであることのデメリットを感じることが一つあります。
それはピアノが減衰音であるという点です。ある程度のプロの声楽家なら、音を取るということが機能的に割り切れているので、どんな楽器でも構わないはずです。ところがアマチュア合唱団においては、自分のお手本がどのような音で鳴っているかが団の出音を左右することがあります。例えば、声楽家が指揮者である合唱団の場合、合唱団全体がその声楽家の声(というか表現の仕方)に近くなってしまうことはよくあります。その声楽家がピッチが悪くてひどいビブラートの持ち主だった場合、目も当てられない結果となるわけです。
つまり、皆の前でこのように歌って、とピアノを弾くと、聞いた人はピアノのような減衰音のような声を出す可能性があるということです。もちろん歌い手は自分の声が減衰音になったと意識してるわけではありませんが、もう少し表現を変えて言うならば、歌い手が音符を音を出し始める「点」としてしか意識できなくなるような歌い方になってしまうということです。打楽器などと同じ感覚で、一度声を出してしまったらあとはなすがままのような無責任な声です。
もちろん音取り段階を終えれば、もう少しレガートにフレーズを作ったり、伸ばす音にも神経を使うようになるはずですが、音取りになると急にふしだらな声を出してしまうのは、やはりピアノの音のせいなのでは、と私は感じることがあるのです。

それならやはり持続音系で音を取りたいと思うのですが、なかなか都合の良い音というのはないのですね。複数の音を出すためにはやはり鍵盤楽器である必要があって、そうなると手っ取り早いポータブル電子楽器ということになるのですが、持ち運びのできる小さな電子楽器はなんといっても音がチープ。ひどいビブラートがかかっている音色が多く、なかなか使い物になりません。
そういうわけで私にとって便利な音取り用キーボードと言うのは、まだまだ見つかっていません。


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