今回は音にまつわる時間の話を数字を並べて書いてみましょう。数字があるだけで嫌な顔をする人もいるとは思いますが、たまにはこんなことを考えてみるのも面白いと思いますよ。
音楽で時間といえば、まずテンポ。
四分音符=120といえば、四分音符が一分間に120回あるテンポを表します。一分間に120ということは、一秒間に二つ。つまり四分音符一つあたりの時間は
500msec になります(1msecは一秒の千分の一)。これが倍のテンポ四分音符=240だと、当然時間は半分で
250msec です。
テンポ120くらいでも、16分音符くらいは出てくるかもしれません。この場合、16分音符の長さは、125msec ですね。
こうやって考えてみると、音楽の中で一つの音符が認識できるというのは、だいたい
100msec くらいが一つの限界かもしれません。
もちろん、音符レベルでなくて、もっと音楽のグルーブ感みたいなものの違いを感じるのは、数10msec
くらいのレベルになるものと思われます。
例えば、人は音の残響を聞いて、部屋の広さをだいたい想像することが出来ます。特に重要なのは初期反射音といって、音が出た瞬間からどのくらいの時間がたって最初の残響が来たか、その時間ということになるのですが、この時間がほぼ
数10msec ほどのオーダーになります。音の速さが
340m/sec とすると、10m音が伝わるのに約 30msec かかりますから、このくらいの初期反射音の時間なら少し広めの部屋かな、と感じられるわけです。これが
100msec オーダーになると、往復で30mくらいの距離になるので、かなり大きめの空間だと想像できます。
もうちょっと、細かい時間を考えて見ましょう。
例えば、Aの音(時報の音)は 440Hz ですが、Hz(ヘルツ)とは一秒間の振動数ですから、一波形の時間は
2.3msec になります。これが、もう一オクターブ低くなると(220Hz)
4.5msec ほど。さらに一オクターブ低くなると 9msec。人間の可聴域は 20〜20000Hz とかいいますが、20Hz
だと一波で 50msec もかかります。しかしここまで低いと、たいていの楽器ではもはや倍音によって音程感を得ているのではないでしょうか。逆に
20000Hz だと一波が 50μsec(1μsec は 1msec の千分の一)になります。
サンプリング定理によると、音をデジタル化する場合、再生したい周波数の2倍のサンプリング周波数が必要です。例えば、20000Hz(20KHz)まで録音したければ、サンプリング周波数は
40000Hz が必要なわけです。ちなみに、現在のCDのサンプリング周波数は
44.1KHz。この値なら 22050Hz の音までが記録可能です。44.1KHzのときの一サンプル分の時間は、約
22.7μsec。CDはこの時間に一回、ある音圧を出力しているわけです。22.7μsec
で 16bit 分のデータを出すということは、約
700Kbps の通信速度があれば、CD音質の音を鳴らすことが可能になります。あ、ステレオならその倍ですね。
最近はコンピュータで音そのものを扱うことが容易になってきました。CDを作るときも、音を録音した後その波形を見ることが出来ます。例えば、ある曲の演奏を波形で見たとき、時間スケールを粗くしてみると、フェルマータのところとか、フォルテシモのところとかがわかって面白いものです。自分達の演奏を見たときに、子音でかなり波形が振れていたりとか、クレシェンドとか全然出来てない^^;とか、妙な発見があることと思います。上記のように一サンプル分のレベルまでデータを見れたりして面白がっているのは、やはり私が技術屋さんだからでしょうか。