混声合唱組曲「わらははわらべ」

初演のプログラムより...

 全部で6曲からなるこの合唱組曲は、矢川澄子さんの詩集「ことばの国のアリス(現代思潮社)」からインスピレーションを得て作曲されました。これらの詩の特徴は、読んでいただければ明白ですが、すべて詩の最初の行がわらべうたやそれに類似する語句から始められているという点にあります。しかし、ただそれだけではなく、それ以降の詩の言葉には皮肉なユーモアが存分に込められています。大人が子供に抱く天真爛漫に成長して欲しいという希望(それは大いなる幻想!)やイメージが逆手に取られ、大人のいわば「シャレにならない辛さ」を表現しているということがこれら詩の尽きない魅力であり、面白さでありましょう。
 例えば、1曲目の「ほぅ ほぅ ほぅたるこい」の場合、わらべうたなら「甘い水」でほたるを呼び寄せるのですが、ここでは「良薬口に苦し」ということわざを持ちだして、苦いほうを選ぶべきだと諭しています。全編にわたり、男女の仲のすれちがいをモチーフにしているところを見ると、この詩も「あっちのかわいい子と私のどちらを選ぶの?」と男に対して究極の選択を要求しているようにさえ思えてしまいます(全くシャレになりません)。
 今回は幸運にも(無理矢理?)作曲者の指揮によってこれらの曲を初演する運びとなりましたが、各演奏者がこれらのブラックユーモアをまるで他人事のように歌ってしまうのではないかととても心配しているところです。まずは、その点、皆さんとくと御覧くださいませ。
 蛇足ですが、この曲は第18回神奈川作曲コンクールにて佳作を頂くという思いがけない幸運に恵まれました。

「わらははわらべ」より「はないちもんめ」



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