混声合唱組曲「プールサイドの天使」

初演に寄せて

私がこの曲を作曲したのは、もうかれこれ9年も前のことになります。このままいけば、初期の習作として闇に葬り去られるはずだったこの曲を、この度静岡大学混声合唱団が闇の底からすくい上げてくれました。心より感謝するとともに、あらためて御礼申し上げます。
もう無邪気に青年ヅラできなくなった私には今後このようなテキストを選ぶことはないでしょうが、それでも20代の私がこの詩を選んだことには自負心を感じています。それは一見、端正でさわやかな言葉の表現の中に、若者特有の不安や悩みが織り込まれていて、詩を読む多くの人の共感を呼び起こすように思えるからです。
詩を書く人にとって「憧れ」とは、自然や人の心が移りゆくさまを見事に言葉で捉えることかもしれません。そして、恋に悩む人は、あなたが想う人のほんの些細な一言やしぐさに一喜一憂しながら生きていることでしょう。また、将来に不安を抱く人には、「本当の仕事」とは何か、自分が何をやりたいのか思いを馳せていることでしょう。そういった今を生きる等身大の若者の姿がこれらの詩の中に描かれているのです。
ありきたりかもしれないけれど、誰もが心に持っている不安、若いからこそ共感できる詩の世界がここにあります。いまどきの大学生にはちょっと甘っちょろいかもしれません。でも若いからこそ、恥ずかしいほど純粋に自分の想いをぶつけられるものです。そうして、そういう恥ずかしいことを繰り返しながら、みんな歳を重ねていくんですよ!
楽想は比較的単純ですから、どなたが聞いても楽しめることと思います。幸い、これを機に楽譜も(自費)出版していただいたので、多くの方に歌い継いで欲しいと心から願っています。

「プールサイドの天使」より 5.星の岸辺で


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