大手拓次の詩による四つの混声合唱曲

私の本格的合唱曲として最初の作品である。浜混で指揮をしている斎藤先生に気に入ってもらえたところから、この曲の幸運な初演が行われることになる。
以下、初演時のパンフの言葉より...
「大手拓次の詩による四つの混声合唱曲」について
大手拓次は幻想のなかに究極の美を見いだそうとした異色の詩人です。彼の詩には、彼自身の恋愛体験から生まれたその研ぎすまされた感性が色濃く反映されており、官能や怪奇の世界が彼独特の言葉で綴られています。ときには一種病的にも思えるその感覚は、もしかしたら私達の無意識の内にどこかに潜んでいるものなのかもしれません。
四つの詩は一人の男の絶望的な恋愛体験をなぞるようにそれぞれ配列されています。男は愛する女性とかわす「夕暮れの会話」の中で恋に酔いしれ、夢の中でその女性と「黄色い接吻」をします。やがて恋に破れた男は「落葉のやうに」彼女を想い続け、絶望の中で「死は羽団扇のやうに」訪れることを予感します。
「夕暮れの会話」は叙情的なメロディで恋人への憧れが表現されており、詩の中の「こひびとよ」という言葉を反復することによって愛する人への想いを盛り上げます。
「黄色い接吻」は全編五拍子で書かれています。中盤は夢の様子を幻想的な雰囲気で表現し、「はを」でクライマックスをむかえます。アカペラの演奏のあと、曲はまた現実の世界に戻ります。
「落葉のやうに」は流れるような伴奏の上に、メランコリックなせつないメロディが歌われます。旋律は各パートに断片的に演奏されます。
「死は羽団扇のやうに」は暗く不安な雰囲気と、畳みかけるようなアップテンポの部分の対比で死の予感が歌われます。
最後にこの曲の初演は斎藤先生なくしては語れませんでした。心より感謝申し上げます。

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