浜松世界青少年合唱祭レポート


[Nifty FCLA 「合唱の部屋」での発言より]

関係者の発言がないようなので^^;、先日の27、28日に行われた浜松世界青少 年合唱祭の報告及び感想など書いてみようと思います。
この企画、5年前にも行われたものらしいですが、第2回が開かれたことはと ても評価できます。「音楽の街」にはまだ程遠い浜松ではありますが、こうい う企画を地道に行うことによって地域の合唱活動が盛んになることを願うもの です。しかし、残念ながらコンサートのほうは決して人のいりが良いとはいえ ませんでした。私の周りの合唱関係者も数えるほどしかいない。残念なことで す。

27日(土)10:00 - 12:30 合唱セミナー
セミナーを行ったのは3団体。
最初はインゴルフスドッティル女史率いるアイスランドのハムラフリーズ合唱 団。内容はアイスランド民謡の紹介。印象的なのはやはりヨーロッパとは地理 的な遠さもあるためか、非常にエキゾチックな音楽だったこと。特に、今世紀 になるまでアイスランドは器楽が余り発達せず、音楽と言えば歌を歌うことだ ったという事実より、多くの民謡やメロディが残っているということである。 古い民謡だと中世教会音楽のような5度の平行オルガヌムみたいな音楽。ま た、アイスランド民謡の特徴としてリディア旋法(ファがファ#になる)が多 用されている。また7拍子のリズミカルな曲も紹介してくれた。
次は、フィンランドからベラヤペルト合唱団。指揮者はペララーティ氏。内容 はよく自分たちが歌っている現代音楽の紹介と言ったところ。特に、ヨハンソ ンの Pater Noster は曲を細切れで歌ってくれ、クラスター的なところ、しゃ べりで音楽を作るところ等を表現してくれた。最後はカナダの作曲家シェーフ ァーの Snowforms を演奏。その前に、楽譜を見せてくれたのだが、完全に従 来の記譜法から離れている。そばにいた知り合い曰く「シーラカンス状態だ!」 ま、これでどんなもんかわかっていただけるでしょう。しかし、譜面のすごさ に比べ、非常に美しくて透明感のある音楽だったのは以外だった。
最後の団体は韓国の宣明会児童合唱団。指揮者はハク ウォン ヨン氏。内容 はズバリ発声である。まず顔の断面の図を配られたが、この中のいくつかの部 分に数字が書かれている。実際に合唱団の児童に一人で歌わせ、その人の声が どこのポジションで歌っているか、数字で言うのである。私が思ったのは、結 局われわれ東洋人が西洋式の発声を真似ようと思ったとき、西洋人なら無意識 に自然に行うことをわれわれは体系立てて理論化しなければいけないというこ と。そして同じジレンマは当然韓国の合唱団でもあるのだなあ、と感じたのだ った。最後に韓国の歌を歌ってくれ、結構楽しめた。

27日(土)14:00 - 16:00 プレコンサート「民族音楽の集い」
プログラムは以下の合唱団
1.リトアニア放送児童合唱団 - リトアニア
2.ハムラフリーズ合唱団 - アイスランド
3.モスクワ・第79音楽学校コンサート合唱団 - ロシア
4.ラジオデンマーク少女合唱団 - デンマーク
5.ジンタルス女声合唱団 - ラトビア

さて、「青少年」と聞いてちょっとバカにしたあなた。コンサートにくればそ れが大きな間違いだったことがわかる。私も児童合唱団が中心だと思ったの に、実は全然違って、ほとんどが10代後半から30代くらいまで人で構成される 合唱団である。若いし、表現力を持つには十分な年令である。
面白かったのは、舞台上のふるまいや構成、その他いろんな部分で各国の、い や各団体の個性がでていたこと。例えばロシアの合唱団はマイクを使ったし、 ハムラフリーズは歌いながらホールの後ろから歩いてでてきた。また、それぞ れ工夫を凝らした衣装も楽しめた。
デンマーク、リトアニアはちょっと印象が薄い。声量と表現力に欠けたか? ロシアは飲み込む発声で、ちょっと暑苦しく感じてしまう声がいまいち好みに 合わない。舞台上で写真を取る変なオジサン(実は団おかかえのアレンジャー でもあるのだが)が気になる。
ジンタルスは圧倒的な表現力と、余裕を持った歌い方で、ひときわ飛び抜けて いた。民謡はかなり前衛的な手法でアレンジされていたにも関わらず、それら を見事に表現していたのはさすがである。しかし、この合唱団はどう考えて も「青少年」とは思えないのだが...
個人的にはハムラフリーズが大変気に入った。入場の懲り方もさることなが ら、団員一人一人が自律的に歌うことを楽しんでいるのがよくわかる。また、 日本語による寸劇がとてもウケた。観客一同、非常にこの合唱団に好感を持っ たことだろう。
この日のコンサートの終わった後、出口でハムラフリーズとジンタルスのCD を売っていた。早速買ってしまったのは言うまでもない。

28日(日)13:30 - 18:30 メインコンサート
プログラムは以下の合唱団
第一部
1.ミュージカルクワイア浜松 - 日本
2.モスクワ・第79音楽学校コンサート合唱団 - ロシア
3.リトアニア放送児童合唱団 - リトアニア
4.宣明会児童合唱団 - 韓国
5.浜松ライオネット合唱団 - 日本
第二部
6.浜松学芸高等学校音楽科合唱団 - 日本
7.ジンタルス女声合唱団 - ラトビア
8.ハムラフリーズ合唱団 - アイスランド
9.ラジオデンマーク少女合唱団 - デンマーク
10.ベラヤペルト合唱団 - フィンランド
11.浜松市立高等学校合唱団 - 日本

要所を占める日本の合唱団は全て浜松から...というのはおいといて、まあ 日本の合唱団については語ることもないでしょう。強いて言えば、市立の演奏 で「おーい、ピッチが下がってるぞー」と叫びたくなったことくらいか。
感想は、印象に残ったことをいくつか。
まず、宣明会は結構な難曲に挑戦していた。実力は高いのだが、表現力が追い 付かない感じ。残りの曲では、衣装や小道具や踊りなどによる華やかな演芸会 状態となった。いやまあ、すごいことといったら...。極彩色の彩りで、扇 を持って踊る姿はまさに東洋の神秘である。いかんいかん、一体私は何に感動 しているのであろうか?はっきり言って、ソウルオリンピック開会式状態とも 呼べるだろう。
第一部は各団ともステージ後半にポピュラー曲や、わかりやすい曲、演芸には しる曲などを持ってきて、客へのサービスを忘れなかった。また、どの団も、 ちゃっかりアンコールを用意していたりするのだった。
ジンタルスは徹底的に現代曲。しかし、圧倒的な表現力で、素人の観客も静ま らせるに十分な演奏だった。これはスゴいことだと思う。
ハムラフリーズは現代曲と民謡を取り混ぜたステージ。昨日の寸劇が好評だっ たようでわざわざ曲目を変更して同じ寸劇をまたやってしまったのであった。 しかし、会場はおおいに沸いた。
ベラヤペルトも渋く現代曲中心のステージである。しかし、ジンタルスなどと 比べるとどうしても劣って感じる。アンコールでも現代曲をやってしまった。 ぶっ続けで、これだけの合唱を聞いたのも久しぶりである。私でもこれだけ忍 耐がいるのに合唱を普段聞かない観客には結構辛かったかも知れない。実際途 中で帰った人もかなりいたようである。先にも書いたが、実際に合唱をやって いる人があまり見に来ていなかったのが残念。得るところは多少なりともある と思うのだが。

全体を通して、アイスランドのハムラフリーズ合唱団の売り込み作戦には驚い た。団員が直接ロビーでビラをまいたり、CDを売ったり。なんとかアイスラ ンド民謡を広めようと言う意気込みが感じられる。セミナーのときにもらった サンプル楽譜(曲の途中までだが)があるので、アイスランド民謡でも歌って みようかな、とちょっと思っている。
                               以上


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