古楽コンクール鑑賞記(00/4/23)


昨日今日と(4月22,23日)甲府で行われた古楽コンクールを見に行ってきました。見に行ってきたといっても、私は古楽コンクールを見に来た熱心な古楽マニアというわけではありません。実は、私の妻がこのコンクールに参加したので、彼女のお付きと帰省を兼ねて、この週末一緒に甲府に行くことにしたのです。もちろん、妻も私の実家に泊まりました。
古楽コンクールは今年14回を数え、1年おきにソロ部門、アンサンブル部門と旋律楽器、声楽の部門が交代で行われています。今年は旋律楽器と声楽の部門の年で、参加者数は全部で36人いました。うち声楽は17人、その他はリコーダー、バロックバイオリン、ヴィオラダガンバなどなど。土曜日は予選で36人が演奏し、その中から6人が選ばれ、今日日曜に本選がありました。
妻(ソプラノで参加)もこのために、曲選びから伴奏者選び、伴奏者との合わせ、先生のレッスンなど、毎週のようにいろいろやっていたようですが、残念ながらというか予想通りというか、本選には残れませんでした。まあ36人中6人ですから、すごい狭き門なのは確かですし、残った人はやっぱりずば抜けて上手かったからしょうがないですね。ちなみに6人中、声楽で選ばれたのは2人。声楽だけで6人なら選ばれるくらいのレベルでは歌ってたとは私は思ってますが(かなり贔屓目?)。

このコンクールは、多分日本で唯一の古楽系のコンクールで、特にここ数年で活躍している古楽器演奏者の経歴に決まって現れるのがこの「古楽コンクール○位」という文句。日本の古楽界では、すでに十分な存在価値を持ったコンクールと言えるでしょう。また、コンクールと同時に古楽専門の出版社の出店や、古楽器に製作者の出店などが出され、そのスヂの人たちにとっては見所の多い催しだと思うのですが、やはり純粋な聴衆と言うのはほとんどいなかったのがちょっと残念。KOVOXもそうだったけど、コンクールの聴衆がもっと増えたらなあ、と思うのは私だけでしょうか。すでにこれだけ名の知れたコンクールなのに、意外と寂しいもんだなあと感じたのです。
さて実際の演奏の中身に関してですが、これはもう「玉石混淆」の一言に尽きますね。私は古楽器の演奏には詳しくないので、微妙な部分について誰がどんなふうに上手いか、についてはあんまり言えないけど、少なくとも声楽に関してはあんまりのレベルの差に驚きました。もっとありていに言えば、なんでこんな下手な人が参加してるのって感じです。アマチュアの合唱コンクールと違って、いちおうプロへの登竜門みたいなコンクールだ、と思っていたのが大間違い。結局、テープ審査も何にもないから、申し込んだだけで予選には出れるわけです。どっかの地方の合唱団で、ちょっと声がでかいというだけで誉められて、何も分からないままこのコンクールに出ているような人も見受けられました。まあそれも聞くほうには息抜きにいいのかもしれないけど^^;、なんかコンクールの品位が落ちちゃうなあとも感じたりして。
もちろん、その一方で音大でバリバリに古楽器演奏を習っている人、留学帰りで外国人の伴奏者を連れ歩いている人とかもいて、非常に高いレベルの演奏もたくさん聞けました。正直なことをいうと、特に器楽においては何が高いレベルなのか?ということを勉強できたというのが本音。古楽器というのは、非常にコントロールが難しいらしく、モダン楽器に比べると素人耳には下手っぽく聞こえることがあります。特にガンバなど、間違ってもチェロの音楽を想像してはいけないわけで、奏法が違うのはもちろん、鳴りの違いとか、運動性のなさとか、その楽器の特性を知って始めて演奏者のレベルがわかります。また管楽器系で、勢いあまってピヒューとか奇声を発しても、音楽性の高さが感じられればそれが演奏の傷とみなされない、というような感覚も感じました。特に古楽にとっては、独特なリズム感とかフレージングとかが非常に大事ですから、常に知的なアプローチが求められている、というのもポイントでしょう。
なお、伴奏楽器にはチェンバロが2台、ピアノフォルテが1台(オモチャのピアノのような音^^;)おいてあって、司会者がその楽器の製作者の紹介、及びピッチと調律を紹介するあたりが何ともマニアックで面白かったですね。ちなみに、チェンバロは440Hzと415Hzの二種類が用意され、すべての鍵盤楽器は1/6シントニックコンマという調律だと説明されました。ミーントーンとかベルクマイスターとかは聞いたことがありますが、そんな調律の仕方自身が名前になっているような調律法は初めて聞きました。妻の伴奏者にどんな調律か教えてもらおうとしましたが結局わからないまま。うーん、また調べてみるか。



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