M2讃(99/8/22)


毎年、職場の合唱団でも合唱コンクールに参加しています(関東大会に出ている人にはおなじみか^^;、毎年ビリだけど)。
今年の課題曲はM2(男声の2曲目)を選びましたが、歌ってみるとこの曲なかなか味があっていいんです。

最初に歌ったときは、ありきたりなロマン派っぽい曲だと思いました。曲も短いし、作曲者も、コルネリウス?誰それ?(恥ずかしながら知らなかった)てな感じで印象は薄かったのは確かです。
何回か歌った時点では、ありがちだけど短調から長調への変化とか、内声の面白い動き、それからバスの下降音形などが、なかなかいい味を出しているように思いました。なぜか、高い音域でのベースのパートソロがあるのは、ベースの私にとってはつらいところがありますが(本当はおいしいというべきか)、男声合唱のつぼを押さえた佳曲ということができるでしょう。
しかし、なによりこの曲の魅力は詩にあると私は思います。こういう詩は、実はとてもわたし好みなのです。
詩の内容そのものももちろんなのですが、詩が一つの物語性を持っている、というのが私の心をくすぐります。ただ、詩はかなり短く、この物語に含まれているであろう事件の真相は何も語られていません。あるいは、村の爺さんが、うらぶれた墓標のいわれを若い恋人か誰かに語っているといった雰囲気でしょうか。
しかし、だからこそ、想像力をかきたてられ、王様と若い妃と小姓の3人の間に何があったのか、あれこれ考えたくなります。

この詩を踏まえて曲を見てみると、確かに詩の内容をかなり意識して曲が作られていることが分かります。
冒頭のタッカのリズムでは「心は重く」「髪は白い」と言っているわけで、老人っぽい重い足取りのリズムを象徴しているように思われます。中盤の長調への転調では、小姓という物語を動かす新しい人物の登場と、「美しい(scho:ner)」という言葉のイメージが長調の雰囲気にうまくマッチしています。また、上述したリズムがまた現れ、そこでは「髪はブロンド」「性向は浮薄」の歌詞が当てられ、最初の部分とうまく対比されています。
後半は、「あまりに愛し合っていたので、死なねばならなかった」と何回か繰り返され、最後の繰り返しで ff になり、「Viel zu lieb」(あまりに愛し合って)という言葉だけが静かに繰り返されます。
曲自体がうまく詩の内容をなぞっているので、派手な曲作りよりは、静かに朗々と語るような歌いっぷりが必要とされることでしょう。

同じようなノリの合唱曲でメンデルスゾーンの「三つの民謡」という混声合唱曲があります。大学の合唱団の愛唱歌だったのですが、私はこの曲がとても大好きだったのです。
これも、愛する二人が駆け落ちして、寒さの中で凍死してしまい、その二人が墓に眠る、といった内容の曲です。ドイツ語で歌うと歌詩の意味もわかりづらいんですが、大学では訳詞バージョンが歌われていて、あまりにクラい詩の内容に拒否反応を示した人もいたようです。クライから好きってわけじゃないのですが(もちろんそれもあるけど)、詩に物語性、叙事性があるのがやっぱり私は好きなようなのです。


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