映画の面白さについて(04/5/8)


映画の構造性の話、もう少し書いてみます。
実は、私、最近かなり映画を見に行っています。数年前、浜松のTOHOシネマズが自宅から歩いて10分くらいのところに出来て、暇なときふらっと見に行くようになりました。シネマイレージの会員になると、鑑賞履歴がネット上で見れるのですが、それによるとここ一年で20本は見てます。もちろん、超映画マニアから見れば、少ないほうではありますが。

さて、私が先週構造性と呼んだものについて、もう少し具体的な例を示した方が良いかもしれません。
端的に言えば、構造性とは、ストーリーのメリハリであり、映画を見た人が論理的に納得するための仕組みのようなものです。例えば、序盤で作品の背景、状況、世界観をいかに自然に、かつ丁寧に伝えるかというような点、中盤で、クライマックスに達するまで、どのように緊迫感を盛り上げていくか、あるいはどういう順序でストーリーを展開させ、子ネタ(伏線張り)を散らばせておくか、という点、そしてクライマックス自体をどのように作るか、映画全体の納得感をどうやって感じさせるか、そして何よりどのように終わらせて、観客をどういう気持ちにさせたいのか、という点などが挙げられます。
ただし、こういった映画の流れはエンターテインメント性の高い映画に特徴的であり、ジャンルで言えば、SF、サスペンス、アクション、ホラーといった作品にとって重要な要素です。実は、こういったことが当てはまるのは、ほとんどアメリカ、つまりハリウッド映画なのですね。

目をハリウッド映画から転じてみると、他の国の映画などでは、若干、構造性が希薄になる様な気がします。一カットが長くなったり、映画の主題からそれるようなセリフやシーンがあったりなどします。また、人を驚かすような効果音、音楽も少なくなります(これ逆に振れると最悪←キャシャーンなど^^;)。もちろん、扱う話題も上記のようなジャンルからちょっと離れてきます。例えばフランス映画なら、退廃的な恋愛映画のようなジャンルが面白いし、日本映画なら、やはり人情モノのようなストーリーが安心して観ていられます。
そういったハリウッド映画以外のところで、ハリウッドを真似た映画を作ろうとすると、上記のような構造性の追及が甘くなり、非常に中途半端な作品になってしまいます。レンタルビデオで、フランスのSF映画なんか見たことがありますが、これもかなりトンデモな代物でしたね。やはり、根本的にそういう文化が足りないのでしょう。
もちろん、ハリウッド映画以外のところでは、自分たちの得意領域をもっともっと切り開いて、安易に流行りものに追随しないほうが良いとも思えるのですが、それでも正直言うと、同じ映画制作者として、もう少し何とかならんのかなという気持ちもあったりします。

アメリカ映画でないのに、逆に極端に構造性を追及した映画が昨年ありました。「最近面白かったこと」にも書いた中国映画「HERO」です。ここで書いた私の文での構造性とはもっと狭い意味で使っていますが、話が入れ子構造になっているという点において、この映画では構造性そのものを前面に押し出しているのです。もちろん、入れ子構造は、一般的に回想シーンなどであり得ますが、映画のほとんどが複数の回想シーンで出来ている、というのは滅多に見られません。
さらに、この入れ子構造が二重になったりすると、もはや見ている人はワケが分からなくなりますが、さすがにそういう映画に出会ったことはありません。実験精神の旺盛な人に、是非一度そういう映画を作ってみてもらいたいものです。

ハリウッド映画を批判する人も多いと思います。私も、あまりに勧善懲悪なアメリカ的な発想に辟易とすることがありますが、それでも、映画作りのきめ細かさはさすがだなあ、と素直に感じます。


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