もてない男(99/6/13)


今日の朝日新聞のベストセラー快読のコーナーで「もてない男(ちくま新書、小谷野敦著)」という本が紹介されていました。
その中で、恋愛の出来ない男は人間として不完全だ、という近代が生んだ恋愛至上主義の脅迫観念を批判する、という言葉に興味を覚え、いきなり買って読んでしまいました。
確かに、テレビドラマでも、歌謡曲でも恋愛を礼賛するものばかり。そこには恋愛に無縁な人間の存在は全く見られません。そういった見せかけの恋愛主義が、実際の生活の中であくまで虚像であることに気が付かない人のいかに多いことか。
残念ながら、男であろうと女であろうと、モテる人とモテない人がいる。自分が生きていく中で、モテないならモテないなりに(実際、モテる人というのはほんとに一握りなんだと私は思う)無理のない生き方というのがあるわけで^^;、むしろ恋愛至上主義に陥って一番ひどい目にあっているのは、それに気付かず涙ぐましい努力をしている人たちなのでしょう。

確かに、この本は、モテない男の立場に立って、童貞であることの不安とか、マスターベーションにおかずは必要か?とか、嫉妬孤独の問題とか、女は押しの一手?とかバッサバッサと明快に論じています。たくさんの古今東西の文学(やマンガ)から、そのような問題を扱っている部分などがたくさん引用され、著者の博学ぶりが伺えます。
し、しかし、この本全体には、ちょっと反論したくなる部分もあるし、何だか(恋愛至上主義社会に対する)著者の一方的な怨みばかりが目立ってしまっていて、結果的に面白いとは言い難いなあ。ちょっと、卑屈すぎない?
そもそも、この恋愛至上主義にもっともとりつかれているのは、この著者じたいじゃないの、と言いたくなります。本人自身が、恋愛に対して、あるいは性愛に関する一般的な倫理観に対して潔癖すぎる、と思うのは私だけでしょうか。え、それ本音?とか突っ込みたくなっちゃうなあ。まあ、倫理観だけで男女関係を割り切れないのがこの問題の難しさであって、だからこそ、昔から文学やら音楽やらのテーマになるんじゃないでしょうか。

というわけで、やはりもてない男を論ずるのはやはり難しい、と感じるのでした。論じようとする人間が、どうしても、自分自身の過去の怨み(^^;から解放されることはないでしょうからね。


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