シベリウス2導入(03/7/19)


ここ2年ほど、MIDIの打ち込み、楽譜浄書にはSteinberg社のCUBASEを使っていました(こちら参照)。
しかし元々このソフトは、オーディオをベースとした音楽製作用に使われるものであり、楽譜浄書に使うのはやはり専門外である感は否めません。また昨年バージョンアップして、CUBASE SXになってから楽譜系のバグが多く、いささか辟易としていたのです。

そんな折、ヤマハミュージックメディアから、噂に聞いていた楽譜浄書ソフト「シベリウス2」の日本語版が販売されると聞いて、やはり専用の浄書ソフトに気持ちが傾いてきました。このシベリウスというソフトは、コンピュータ浄書の世界ではFinaleと人気を二分するほど有名なものですが、今まで日本では売られておらず、少なくとも日本ではほとんど使われていなかったのです。
それで、このソフト買ってしまいました。
発売前に予約をしたので、ほとんど発売と同時に手に入れました。そして早速、この1週間ほど最近作った曲を入力しながら、その操作法を覚えているところなのです。

しかし、この浄書ソフト、シブいです。
これまで私が聞き及んだ評価は、操作が直感的でわかりやすい、ということだったのですが、これはある意味正しいけれど、しかしある意味正しくありません。少なくとも、巷にある浄書ソフトとは基本的な発想が違っていて、それを基準に考えるとかなりエキセントリックな操作感です。ですから、これまで他の浄書ソフトを使ってきた人は、マニュアルを見ずにさくさくと使えるようになることはまず無理でしょう。
しかし、シベリウス2の操作感は、その世界にどっぷりはまると非常に早く入力が出来るように設計されています。操作仕様には、設計者のこだわりが強烈に感じられ、恐らくそれがまたシベリウス人気の秘密なのかもしれません。(カタログやマニュアルには、必ず設計者である(まるで双子のような)兄弟の写真を見ることが出来ます)

さて、その操作上の違和感は一体どこから来るのか。
通常の浄書ソフトの発想のベースはドロー系のソフトです。つまり、楽譜を書くことを絵を描くような作業と捉えて、楽譜専用のパレットからいろいろな記号を選び、マウスで置いていく、という流れを基準に操作感が考えられています。
シベリウスの場合、その発想のベースはワープロです。楽譜を書くことを文章を書いていくような作業と捉えるわけです。浄書ソフトなら大抵見られる表情記号のパレットウインドウはシベリウスにはありません(常時表示するようなタイプはないということ)。ほとんどの操作はキーボード操作で完結できるように設計されています。
例えば、スラーを書きたいとき、他のソフトならスラーの絵を選んで、音符の上でドラッグさせて入力します。しかしシベリウスの場合、スラーを書き始めたい音符を指定したあと、「S」を押すとスラーが入力され、そのあと「Space」を押すたびに、スラーは一音符ずつ長くなっていきます。
もちろんこの場合、スラーの向きや角度などは全てシベリウスが考えてくれます(あとで調整も可能)。つまり、ワープロ感覚にするために、細かい位置決めや、音符の間隔、小節送りのような作業を逆にシベリウス側が積極的に自動調節するようになっているのです。他のソフトなら、各小節の長さを後で再フォーマットしたりする作業がありますが、シベリウスなら入力中も常に自動に行われます。リアルタイムに小節のレイアウトを調整するこのロジックは、ソフトを作る側から見るとちょっと驚きです。
いずれにしろ、このワープロ感覚が身につくと、恐らく楽譜を書く余計な手間に関わることなしに、音符を並べる作業そのものに専念できるというのが、このソフトの売りなのでしょう。

まだ、シベリウスの機能全体を理解したわけではないのですが、やはりちょっとした不満はあります。
もちろん上記の入力の問題ではありません。むしろ、これは私としては非常に好意的に感じています。
不満は曲のMIDI再生です。これまでずっと専用MIDIシーケンサーを使ってきたので、中途半端な音楽用語の読み込みによるMIDI再生はどうも気に入りません。ここにもMIDIを意識させずに最適な演奏をさせようという設計者のこだわりが感じられるのですが、さすがにMIDIは一筋縄ではいかないようです。
本当にチェック程度ならいいのだけど、人にも聞かせようと思うと、今の再生機能ではちょっと役不足の感じがあります。

このソフトには、専用のビュウワーである Scorch というソフトが付属しています。これは、Webブラウザのプラグインとして機能し、シベリウスで作ったデータをインターネットで公開させるためのものです。実はこれも今回狙っていた機能の一つ。もちろん、PDFファイルとして公開してもいいのだけど、一緒に音が出たほうがいいですよね。
というわけで、近いうちに一部の楽譜を公開するかもしれませんので、お楽しみに。



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