器楽曲をどう書くか -変奏曲篇-(03/5/31)


オリジナル作品一覧にあるように、仮想楽器によるアンサンブルという一連の器楽曲を時々作曲しています。
これは前も言ったように、アマチュアが十分演奏できるよう作曲にはそれほど手が込んでいないけれど、現代的ポピュラー的テイストを持っているというような作品群です。もちろん私にとっては、歌詞がない音楽をどのように構想してどのように作曲していくか、自分の感覚を磨くために時々こういった曲を書き続けています。

このシリーズで、私は何回か変奏曲形式にチャレンジしています。変奏曲が自分にとって面白い理由を挙げてみると

とこんな感じでしょうか。
そこで今回は、変奏曲形式で作られたこれらの曲の作曲過程での試行錯誤の様子をご紹介してしまいましょう。MIDIで曲を聴いていただければ、以下の内容を理解し易くなることと思います。

最初に変奏曲形式で作ったのはアンサンブル第二番です。
この曲は、主題、変奏1〜5、再現部と、全部で7つのセクションで構成されています。
旋律は派手ではないけど、ちょっとエキゾチック(あるいは民謡っぽい)な雰囲気にしてみました。派手でないことが変奏しやすいような気がしたのです。
そもそも、古典派の曲をほとんど聴かない私が、まず最初に変奏曲形式で書くのに参考にしたのは、なんとプロコフィエフピアノ協奏曲第3番の第二楽章でした^^;。これも変奏が5つ。そして、各変奏が終わるときに同じフレーズ(ある種の終止形)が現れるのも真似てみました。自分としては、いろいろなバリエーションを入れてみたかったので、随分気合が入って、変拍子あり、半音階旋律あり、ミニマルありのバラエティに富んだ曲想が並んでいます。
さて、この曲の最大の失敗は、各変奏が全く変奏に聞こえないことです。第一変奏からして、ほとんど元旋律の面影がありません。逆に作曲途中に気にしだして、段々と元の旋律に近づいてくるという感じになってしまいました。こういうのはちゃんと古典的な変奏曲を研究すべきだったのかもしれません。
もう一つ個人的に気に入らないのは、各セクションが小さな形式を持ってしまい、まるで7つの曲がアタッカで繋がった組曲みたいになっている感じがすることです。その割には、その小さな形式はA-B-A程度のものでなんとも中途半端です。

これらの反省を踏まえ、まず各変奏の長さをもっと短くすることにしました。それにより、変奏の数を増やします。また、元になる旋律をシンプルにして、変奏されるにつれ段々元旋律が崩されるようにするべきだと考えました。
この考えに基づいて書いたのがアンサンブル第四番です。構成は、主題、変奏1〜9、再現部、と全部で11のセクションから成ります。
旋律は、動機ともいえるくらい短くシンプルなものです。第5変奏までは、旋律の上下関係は変えず、和声付けやリズムを変化させていきます。第6変奏で、反転形(旋律の上下が逆さになったもの)が現れます。その後、反転系が変奏されていきますが、最後の第9変奏の盛り上がりの途中に元の主題が現れ、そのまま再現部になだれ込みます。
構造的には、いろいろ工夫があったのですが、逆に旋律が単純すぎて印象に薄くなってしまった気がします。
もう一つ、各変奏が短くなったため曲が細切れになってしまい、どうもせわしない印象を受けます。なるべく、雰囲気の違う変奏を隣り合わせにしようとしたのですが、それが逆に良くなかったのではないかと思います。

そこで、この反省を踏まえ^^;、複数の変奏で一つの大きなブロックを作ったらどうかと考えました。そのようにすれば、例えば経過句のような部分も変奏の一つとして考えられ、音楽的な物語にもう少し大きなうねりを作れます。
今週アップしたばかりのアンサンブル第五番は、主題、変奏1〜12、再現部、と全部で14のセクションから成ります。このうち、主題と変奏1〜3までがテンポのゆっくりした一つの大きなブロックです。同様に、変奏4〜6、変奏7〜9、変奏10〜12と再現部、というように曲全体が4つの大きなブロックに分けられるようにしました。
主題はやや長めの旋律で、この旋律の構成部品が前から順々に変奏されるような形で曲は進みます。
また今回は、敢えて各変奏の切れ目は聴衆にわからなくてもいいという作曲をしてしまいました。しかし、これに関してはまだ迷いがあります。

変奏曲でどのように元旋律を変奏させ、また曲構造を作っていくか、きっとこれからも試行錯誤を繰り返していくことになるでしょう。


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