進化心理学の面白さ その2(03/4/5)


人類がここまで発展し、種として大きな繁栄を得られるようになったのは、言い換えれば、人間とその他の動物の大きな違いとは、結局のところ個体同士の、つまり人と人との連帯が出来るということなのです。
人間は、自分たちが生き延びるために、個体同士で連帯するという作戦を取りました。前回、言ったように連帯には、ただ乗り問題が生じます。これを解決するため、人間は結果的に大きな脳を必要とするようになります。誰が自分の味方なのか、誰が自分に利益を与えてくれるのか、それを判断するためです。

さて、生物体は遺伝子の乗り物に過ぎない、という考え方はご存知ですか?いわゆる利己的な遺伝子というやつです。
遺伝子にとっては、自らが複製されることが最も重要なことです。結局のところ、生物体はその遺伝情報を伝えるために最善な行動を取ろうとするし、進化もそういった方向に進んでいきます。
遺伝子が残るためには、その生物体が生き残るということがもちろん一番大事なことですが、自らの遺伝子を複製して増やすということを忘れてはいけません。いわば生殖の問題です。
これは、人類に照らし合わせて言えば、男女間の生殖、つまり恋愛、性愛をつらぬく行動原理に結びついていきます。

ことこの生殖問題となると、人間の心理は男女間で大きな隔たりを見せ始めます。
まあ、そんなことは誰でも無意識のうちに感じているでしょう。例えば、男ならきれいな女性に見とれるのは当たり前のこと。ただ、同じような感じで、女性が男性に見とれるとは思えません。だからこそ、女性は化粧したり、きれいなファッションを身に纏って、自分が美しくなるということに非常に気を使います。これは、どう考えても男の目を引き付けるために行っている(たいていは本人は無意識に)、遺伝子によってプログラミングされた行動なのだと思います。
男女ともに、どのような人を交配相手に選ぶのか、これが最も大きな関心事です。しかし、その選び方に関しては大きな違いを見せます。
人間にとってやっかいなのは、脳が大きくなったため、人間が成長するまで非常に時間がかかり、その育児にも多大なエネルギーをさく必要があるということです。そして、当然交配相手の選び方も、こういった要素を反映するように心にはプログラミングされているはずです。
進化心理学的にいうと、まず自分の遺伝子をたくさん残すために生殖を行うための行動を短期間交配戦略といい、それにプラスしてその子供を育てるのに必要な行動を長期間交配戦略と呼んでいます。
人間は男女ともに、この長期間交配戦略を行っています。これは、例えば結婚相手の条件に優しさとか寛容さとか、そういった性格的な美質を求めるといった形で現れます。ただ子供さえ作ればいいのなら、相手の性格などどうでもいいわけですが^^;、人間の場合一緒に子育てをするからこそ、相手を選ぶのにその人間性を重要視するようになるわけです。

ところが、ことがやっかいなのは、人間はまだこの短期間交配戦略を捨てきっていないということです。
これはありていに言ってしまえば、一夜限りの関係、あるいは婚外交渉(つまり不倫)とでもいうべきもの。短期間交配戦略においては、男女間の差異は著しく広がります。男は性行為に関しては実に身軽ですが、一方女性は、妊娠、出産という危険を冒すことになり、場合によっては育児を行う必要もあります。つまり短期間交配戦略においては、女性は圧倒的に不利です。
しかし、男性がその時々の性行為を追い求める傾向を失っていない、ということは、人間が短期間交配戦略をまだ使っている、というように考えることもできます。女性にとっても、短期間交配戦略が必要な場合があり、このいわば「不義戦略」が何らかのメリットがあることを伺わせます。
例えば、資源獲得能力のある男、要するに経済力のある男性と不義の関係を持つことは女性にとっても十分な利益があります。要は、お金のある男となら不義をしてもいいということ。これは、まさに女性の不義戦略の一例ではないでしょうか
まあ、これ以上は皆さんでいろいろ想像してみてください。

単に恋愛、性愛行動を取ってみても、これだけ人間の行動が多彩なのは、それらの行動を起こすためのプログラムが心にあるからに他ならず、だからこそさらなる種の繁栄も期待できるわけですが、恋愛に関する個人の悩みもますます深まっていくわけですね。



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