ついつい見てしまった「僕の生きる道」(03/3/21)


火曜日の夜10時からやっていたTVドラマ「僕の生きる道」ですが、結構はまってしまいました。なかなかよく出来たドラマで、毎週テレビを見ながら泣いてました。わかっちゃいるけど、うまく泣かせるんだなあ、これが。
内容的には、良くありがちな、余命あと僅かモノ。だけど、いわゆるトレンディドラマ的ノリとはどこか肌合いが違うんですね。
何が違うかって、そのあまりに朴訥で不器用な主人公の生き方。そして、素直でストレートな考え方や行動。セリフも歯の浮くような軽々しい恋愛の言葉でなくて、もっとリアルで生々しいもの。製作者側にも、安易に若者だけをターゲットにせず、随所に知的なものを感じさせる作り方です。
この手の余命あと僅かモノの場合、ただ死ぬことの悲しさだけを表現することが多いわけですが、このドラマのように、何の変哲もなく暮らしていた男が、残り一年を精一杯生きることを決意し、一つ一つは小さなことだけど今まで勇気がなくて出来なかった行動をしていく様は、やはり見ている者に感動を与えずにはいられません。
そういった小さなパワーが少しずつ人々を動かします。それまで主人公の中村先生を、恋愛の対象として気にも留めなかったみどり先生が、余命一年とわかっていても結婚を決意するのは、主人公のそういったパワーが人を少しずつ動かしていった賜物でしょう。

このドラマの素朴なまでのストレートさはやはり特筆モノです。
例えば、普通のトレンディドラマなら結婚は最終ゴールですが、このドラマは違う。愛し合う二人はすぐに結婚してしまうのです(かなりスピード結婚)。二人の間にはドタバタした痴話げんかなんか起きない。最後の最後まで二人はなぜか敬語で語り合います。こういった一昔前とも思える恋愛における固さが、逆に妙なリアリティを感じさせる一方、結婚生活の生活くささを物語から排除し、このストーリーの寓話性をあげるのに成功しています。
それに何といっても、受験のつらさから生徒の気持ちを解放するのに、主人公が歌、合唱に目を向けたというのが、まあ合唱をしている私から見ても、あまりの素朴さを感じさせます。
そう、恐らく誰もが、歌を歌うのは気持ちいい、ということを感じているのです。それを複数人数でやろうと思えば、合唱になるわけで、これまた実にストレートな発想です。多少、日本ぽいと思うのは、合唱を続ける目的がやはりコンクールになってしまったこと。いまどき、「この道」とか「野ばら」は合唱コンクールでは聞けませんが^^;;;、その素朴さを徹底するためには間違っても「ゴリラのジジ」とか「女に」とか「南島歌遊び」とかではいけないわけですね。
そういえば、指揮者が振り終わったら倒れるって話、私も書いたことがありました(「熱血合唱映画」参照)。いやあ、同じことやっぱり考えちゃいますよね。しかも同じく余命あと僅かモノだったりして。

意外とこのドラマ、映像にもいろいろこだわりがある感じもします。
中村先生のアパートは、いつもちょっと見上げるアングルで、青い空に汚いアパート、横に妙な煙突が立っている映像。それから、体育館への螺旋階段を真下から見上げる映像。これらが割と頻繁に現れて、音楽でいえば主題のようなものを表し、作品全体の統一感を出しています。
それから、合唱の練習をする体育館や、中村先生の部屋はいつも暗い。体育館など、もっと明るくてもいいのに、と思ってしまいます。超だだっ広い理事長&みどり先生の家は、家具も少なく、何か寂しさを感じさせます(しかも毎回何かを食べている)。こういったお決まりの場面では、必ずある決まった雰囲気を出すような工夫がされている感じがしました。
そして、なんていってもキャストがいいですね。主人公&ヒロインともども、この朴訥な寓話性の高いストーリーにぴったしだと思いました。



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