歌は世につれ(03/1/4)


大晦日の晩は、妻の実家でずっとNHKの紅白歌合戦を見ていました。
もう長いこと、流行歌には疎くなっているので、こうやってたまに歌番組を見るのも面白いものです。
いろんな世代の人が見て楽しめるように歌手を選んでいるこの紅白歌合戦、逆に誰が見ても中途半端にしか楽しめないという部分はあるかと思いますが、私のようにただ、だらっーといろんな音楽を聴こうと思っている人にはそれなりに楽しめてしまいます。NHKのりのダサいギャグには閉口しますけど・・・。

私がもっともポピュラー系の流行歌が好きだったのはやはり高校生の頃でしょうか。特に、自分も見よう見まねで曲を作ろうとしていた時期でしたから、アイドルの新曲とかのコード分析をしてよくピアノで弾いて遊んでいたので、その頃の曲は良く覚えていますし、今聞くと大変懐かしいです。
特に80年代中頃、アイドル歌手が実力派ソングライターに曲を作ってもらうのが流行っていた時期があります。その代表的な歌手は何といっても松田聖子と中森明菜。それ以前だと、一世を風靡したアイドル歌手というのは、特定の作曲家と組んだものでした。例えば、山口百恵は宇崎竜堂&阿木燿子コンビ、ピンクレディーは阿久悠&都倉俊一コンビといった感じ。
松田聖子、中森明菜はそのような特定の作家とペアを組まず、いろんなタイプのシングル曲を発表しました。特に、中森明菜が最も売れていた頃、もう私から見たら何か意地のようなものを感じたりしましたが、毎回違う作曲家に曲を作ってもらっていたのです。
ちょっと挙げてみると、来生たかお、細野晴臣、玉置浩二、井上陽水、高中正義、松岡直也、加藤登紀子、などなど。全く、別のタイプの人たちを次々に起用していたのがわかります。(ってわかるのもやはり30代以上?)
まあそんなことはどうでも良くて、私は80年代にはよく歌謡曲を聞いていたということがわかって頂けたと思います。^^;

最近はアイドルという言葉も死語なのか、歌手と女優が割と分かれているようですね。しかも、ここ数年やけに熱唱タイプが多い。歌唱力そのものを売り物にしている歌手も多く、なかなか歌謡曲界も賑わっているようです。
まあ、30代くらいなってしまうと業界人でもない限り、「最近の曲は良くわかんないよなー」などと思わず言ってしまいますが、我々がまだティーンエイジャーだった頃にも、親の世代は同じようなことを言っていたわけで、そういう意味では、流行歌の世界は昔から何にも変わっていないように思えます。我々が、80年代の曲は良かった、などと思うのは、その頃が自分たちが一番良く聴いていた時代だったからで、今の10代の人たちだって、20年後には同じことを言っているんじゃないでしょうか。

これこそ、私が言っている名曲の条件の小さな例だと思うのです。
結局のところ、流行歌は10代、20代の最も多感な世代をターゲットにしていて、この頃自分が気に入った曲というのは、やはり一生心に残るものです。同じ歌詞を聞いても、10代と30代ではやはり受け止め方が違う。今まさに、恋愛の真っ只中にいる人には、ラブソングの歌詞の一つ一つが心に響いてくるかもしれません。
実際のところ、自分の音楽的嗜好というのは、ほとんど10代、20代で決まってしまったように思います。だから、私は一生、多感な時期を80年代に過ごしたという十字架を背負ってしか、音楽を鑑賞できないのです。それはきっと誰にも当てはまります。
「名曲」とは、そんな個人個人の想いが集約され、最大公約数的に現れたものなのだと思います。

私が自分の世代から解放されない以上、世代を超えた名曲を論ずるなど無理なことです。だから、私は自分の世代に束縛されていることを積極的に肯定した上で、作曲においては自分の無意識から現れるものを表現していきたいと考えているのです。(ようするに考えすぎても良いものは出来ないってことですね^^;)


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