宝塚のコンクールに参加(02/7/28)


私がかねてより日本の合唱コンクールで非常に好感を持っていると言っていた宝塚国際室内合唱コンクールに再び参加することができました。前回は4年前、ムジカチェレステという団体で出場。そのときは思いがけず銅賞を頂きました。今回は男声の部、ヤマハ室内合唱団のメンバーとして出場しました。
何しろ毎度の如く、本番直前の練習で何とか仕上げるクセがついてしまった我々は、今回も前日の金曜日に出発し、金曜午後から最終特訓、当日も午前中目一杯練習して本番に臨みました。
しかし結果は・・・・(やはり)賞外。全員がきちんと揃って練習することの少ない我々にとっては仕方がないとも言えますが、せっかく宝塚まで来たのだからもう少し良い演奏をしたかったですね。ちなみに男声の部は出場が4団体だけで、結果は金銀がなくて銅二つのみ。我々は銅ももらえない残り二つなわけで、混声で賞をもらえないことよりも何となく寂しく感じてしまいます。

さて我々の結果はさておき、せっかくですから、宝塚のコンクールで思ったことなど書いておきます。
こういった小編成のコンクールはちょっと久しぶりだったので、聞いていても実は自分の評価があんまり定まらなかったのが正直なところです。コンクール自体は混声の途中から聞きましたが、思っていたよりもうまくなかったというのが本音。でも、自分の身の回りの団体よりはよほどマシなんですけどね。特に少人数ですから、本番でハイになると思いがけない事態が起こるものです。我々も人のことは言えませんが、聴いていてそういった事態に遭遇するとやはり胸が痛みます(ほんとか?)。
さて、全体の選曲傾向ですが、ルネサンスと近現代にはっきり二極分化しているようです。ルネサンスはどちらかというと定番曲が多かったように思いましたが、いずれも演奏にはある種のこだわりを感じました。近現代に関しては、特に最近、難解というよりは響きのきれいな曲が流行っているように思います。オルバーン、ブストの流行から、それに近い傾向の合唱曲がいろいろと現われています。いずれも現代的なハーモニーを持ちながら、シンプルな構成で心地よさを感じさせます。こういったものはほぼ宗教曲なわけで、このような嗜好で選曲していくとますます室内合唱の世界から邦人曲が消え去っていく危惧を感じるのでした。
ちょっと話は逸れますが、来年の宝塚のコンクールはジャンル毎で分けるそうです。カテゴリーAはルネサンス・バロック、カテゴリーBは古典・ロマン、カテゴリーCは近現代、だそうです。ジャンル毎に分けるのは大いに賛成なのですが、分け方がちょっといけません。今のままだとカテゴリーBに出る団体が少なそうです。それならば、私はカテゴリーBとして邦人合唱曲、カテゴリーCはAでもBでもないもの(ヨーロッパ近現代、民族モノなど)とすべきだと思います。室内合唱コンクールで邦人部門がなければ、いつまでたっても日本の少人数向けアカペラ合唱曲が育たないのではないでしょうか。

日曜日には恒例の入賞団体によるコンサートが開かれました。
これは文句なしに楽しかったです。PRO MUSICA VIVAは雨森さんの指揮でシェーファーのMINIWANKAが聴けたのが良かった。この曲、先ほど言った響きのきれいな宗教曲とは対極にある非常に難しいアクロバット系。一人一人の音楽的素養が試される曲であることを実感。あふみの「鳥の歌」は、昨日よりさらに吹っ切れて、より自由に楽しく歌っていました。彼らには正直頭が下がるのです。ムジカチェレステでも同様に指揮者をおかず、あーだこーだと練習していますし、「鳥の歌」も演奏したけど(また演奏しますけど)、ここまできっと出来ていません。とても刺激になりました。
なんと言っても凄かったのはESTのフィリピンの曲。この曲、前日のコンクールでも演奏しましたが、今回は振り付き。これがリズムに見事に同期していて非常に面白いのです。見ようによってはアクロバット系なのですが、あえて別にこういった合唱曲を表現するならエンターテインメント系とでもいいましょうか。考えようによっては、ジャヌカンの「鳥の歌」も「マリニャンの戦い」もエンターテインメント系。こういった視覚や擬音で、面白おかしく合唱を楽しんでもらおうという方向性はもっともっと開拓されていいと感じました。ESTの皆さんに敬服いたします。彼らには連続受賞の余裕さえ感じられました。
さて、今回の外国からの招待団体でこのコンサートのトリをつとめたのはイスラエルのモラン女声合唱団。はっきり言って声が違います。もう一つ言うなら体格が全然違います。あの体格ならあの太い声は当たり前か。日本の合唱とは、基本的に質感が違うのです。ここもシリアスものだけでなく、打楽器あり、小物ありのエンターテインメントステージを楽しませてくれました。これが宝塚の最大の醍醐味なのかもしれません。

今回実はもう一つ興味深い経験をしました。日曜日の午前中、各審査員に講評を聞きにいったのです。その場で、合唱指揮者の長谷川冴子さん、松下耕さん等々、そしてこのHPからもリンクしている礒山先生とも会話出来ました。
当たり前のことだけど、審査員はみな同じ気持ちでそれぞれの演奏を聞いているわけではありません。だから、それぞれの講評を聞くと正反対のことも言われたりします。あるいは、気になるところが皆違うわけです。そういったことを目の当たりにしたのが非常に面白く感じたのです。
もう一つは選曲のこと。多くの審査員が同類の曲ばかり並んでいたのが面白くない、というようなことを言いました。これはちょっと意外でした。特に宗教曲なら雰囲気はどうしても同じになってしまいます。これまでは、なるべく相互に関連性のあるような選曲をすべきだと思っていたのですが、審査員の立場からすれば曲のバリエーションがなければ、やはり演奏の印象は薄くなってしまうのです。考えてみれば当たり前のことなのですが、そこまでコンクールに戦略的に対応すべきなのか、議論の余地はあることでしょう。


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