古楽コンクール鑑賞記 その2(02/4/29)


さて、前回書いた古楽コンクール鑑賞記はこちらですので、よろしかったらまず読んでみて下さい。
そういうわけで、今年も2年前同様妻が古楽コンクールに出場したので、ゴールデンウイーク前半での帰省を兼ねて、4月27、28日山梨県民文化ホールで行われた第16回古楽コンクールを見て来てまいりました。

今回のエントリーはなんと、54人。うち声楽は26人。さらにうちソプラノ(メゾ含む)は22人ということで、予選通過枠があるわけではないけれどもソプラノは最も狭き門だったといえるでしょう。器楽は、リコーダー、フルート、バイオリン、リュート、ガンバ等々。やはりリコーダーが12人で最も多かったようです。
運営の方もさんざん言っていましたけど、今回は54人の応募者がいるということで、全体的に時間が押し気味。土曜日の予選は午前10時半から始まって、午後8時半近くまでかかりました。これは審査員も大変です。一人10分程度で、入れ替わり立ち代り演奏して、この中から選ぶのですから、精神的にも随分疲れることが予想されます。
妻の出番は朝の5番目。11時過ぎの出番だったので、そのあとほとんど見ることも出来たのですが、夕方くらいからさすがに飽きてきて、同時に開催されている古楽器の展示や、CD、楽譜売り場でいろいろ物色したあと、夕食に出掛けてしまいました。しかも途中も結構抜けたりしていたので、今回私は全体の半分くらいしか聞いていないと思います。^^;
今回は参加人数が多かったので、予選通過者は9人となりました。残念ながらというか、当然ながらというか、やはり妻は選外。さて、次回はまた挑戦するのやら。

今回は、前回とはまたちょっと違った印象を受けました。声楽に関しては、どうしようもないくらいレベルの低い人はいなかったのですが、逆に飛びぬけて上手いと思った人もいなかった、というのが率直な印象です。若干、妻の結果に期待していなかったわけでもなかったのですが、結果的にはソプラノは2名しか予選通過者はいませんでした。その代わり、男声4人中、3人が予選通過というのはちょっと驚き。日曜の本選も聞きましたが、この男声3人はどれもアクの強い演奏で大きな印象を残しました(ただ、賞には届かなかったようです)。
正直に言うと、土曜日の予選時に自分が上手い、と思った人たちが軒並み予選通過出来なかったので、自分的には何か違和感を感じる結果にもなったのです。もっとも、まだまだ古楽に対する審美眼が私には備わっていないというのは確かなんですが。
ただ、やはり一つ言いたいことは、今回は参加者が多すぎたということです。これだけ多いと、順番の有利不利が出てしまうようにも感じました。現に、予選で午前ブロックの人たちは一人も予選通過できなかったですし。もちろん、本人達はそのような文句は言いませんが(実力さえあれば順番は関係ない、というのはもちろんあるし)、それでもこれだけ人数が多いと後のほうが有利というのはあり得るのではないでしょうか。
まあ私が参加するようなコンクールではないですから、特に強く意見を言う気もないですが、だんだんこのコンクールの認知度が高まり参加人数が増えてくるのなら、例えば声楽部門だけでも切り離したほうがいいような気がしました。そもそも、私にはリコーダーと声楽を同じ土俵の上で評価するのは難しいと思うんですがどうでしょうか。

今回、私的に面白かったこと。
本選での演奏が終わって審査までの間に、別の部屋で古楽器の展示、説明会などを行っていました。各楽器の製作者が簡単な演奏も交えて自分達が製作した楽器の紹介などを順々にしていったのですが、その場での一こま。
あるオルガン製作者が、非常に面白い試みを行ったのです。音楽と数学は非常に密接な関係があると言われますが、バロック時代には例えば作曲家があるモチーフを上下さかさまにしたり、時間軸上で逆さまにしたり、引き伸ばしたりして、一つの音楽の中にそういう要素を混在させるような、ある種の頭脳ゲーム的な作曲をすることがあります。それならば、それを楽器でもしてやろうという試みです。
通常、オルガンの鍵盤の下にはパイプを開け閉めさせるための弁が並んでいて、それを鍵盤が押しているのですが、その鍵盤を左右ひっくり返して置いてみたらどうか、という試みです。結果的に、ドレミ・・・と鍵盤を上に弾くに従って音はだんだん低くなっていくわけです。
そこで、オルガン奏者にその鍵盤でバッハのある曲を弾いてもらったのですが、何とそれでもそれなりに音楽になるのですね。曲はバッハの有名なメヌエットでしたが、この動機が全て逆さまに聞こえるわけです。曲はマイナーになりましたが、十分和声的にも聞ける音楽に成っていました。これはバッハ恐るべし、というべきなのか。



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