スウェーデン放送合唱団来日(01/11/24)


今日24日、富士ロゼシアターで行われたスウェーデン放送合唱団の演奏会に行ってきました。
こういったメジャーな外国合唱団の演奏会に行く機会がこれまであまりなかったので、この演奏会は前からかなり楽しみにしていたのです。浜松からロゼシアターはちょっと遠かったけど、それに見合うだけの刺激を感じることのできた演奏会でした。
なんと言っても、圧倒的にすごいのは彼らの声ですね。あれだけ十分な響きを持ち、クリアで力強い声というのは、残念ながら日本人による合唱団には望むべくもありません。ベースの低音の豊かな音量、そして音域の広さはもちろんのこと、テナーの決して力まずにアルトまでそのままつながるような音色は、本当に惚れ惚れします。女声も音圧とクリアさを兼ね備えていて、素晴らしい性能を持った合唱団であることを実感。
前半は、バッハのモテット1番、モンテヴェルディのセスティナ、ブラームスのジプシーの歌、といった有名どころ。しかし、期待していたバッハ、モンテヴェルディは私にとっていまひとつ。やはり、バッハはバロック専門のスーパー合唱団と比べると、ちょっと聞き劣りしてしまいます。メリスマが十分鳴らしきれなくて、バッハの明瞭なリズム感があまり伝わってきませんでした。逆に、モンテヴェルディはあまりにきれいにまとめすぎていて、一般で演奏されるような激しいマドリガーレの世界とはかけ離れていました。まあ、それがスウェーデンでのやり方だと言われればそれまでですが、個人的にはもっと熱いモンテヴェルディが聞きたかったです。

さて、今回の演奏会の面白さはむしろ第2部の現代曲ステージにあった、と言えるかもしれません。
いずれも筋金入りの現代曲。私が最近言うところのアクロバット系ばかり。そして、こういった曲を演奏することがやはり彼らの使命なんだな、と改めて実感。(そういう意味では、団の存在意義というのが東京混声合唱団と似ていると感じました)
以降は、ここ何回かアクロバット系合唱曲の話題をしていた手前、これらの現代曲の簡単な紹介と私なりの感想を書いてみたいと思います。
第2部最初の曲はヒルボルイ(1954-)の「ムウヲオアヱエユイユエアオウム」(なんつー題名だ!)。プログラムにも、スティーブ・ライヒのミニマルミュージックに影響を受けたと書いてあるだけあって、徹底的にミニマル的な世界が繰り広げられます。なんか同じような曲(もちろん器楽ですが)をライヒのCDで聞いたような気がして、それほど曲として独創的な気がしなかったのです。ただ、合唱団に要求される様々な音色をスウェーデン放送合唱団は全く見事にこなしていたのは敬服。そういった驚きを聴衆に与えるという意味では面白さは感じたものの、どうも心のどこかで引っかかるものを感じます。
というのは、ああいったミニマル的なものはいわば非人間的な要素を売りにしていて、歌手にも徹底的に人工的で機械的な表現を要求するわけです。器楽ならまだしも、そういった音楽を生の歌で行うことに私は抵抗があるのです。なぜなら、現代の録音技術をすれば、このような音響は歌手に非人間的な努力を要求することもなく実現できるからです。
次の曲は、サロネン(1958-)の「いま私にキスして!」という曲。オーケストラの指揮者として活躍しているようですが、この曲もオーケストラの現代音楽的な響きを持った曲だと感じました。冒頭のメロディは非常に跳躍が多く、さすがに歌にはきついものがあります。しかし、中盤の和音はドビュッシー的なものを感じさせ、私には非常に美しく思えました。極端な前衛性はなく、そういった意味でも、この曲は今回の演奏会の中で私の最も気に入った曲です。
次は、トレッセン(1949-)の「わが神、私の敬うお方」。ほとんど、ホモフォニックで歌われますが、その和音が特徴的。クラスター的な和音ではないのですが、恐らく2度、4度の多用で機能和声的にはほとんど響かず、かなり渋い響きの連続。それが曲に対する興味をちょっと萎えさせる感じがしてしまいました。もう少し、俗っぽく甘美な和音が所々にあったらまた印象は違うと思うのです。
第2部最後はノアゴー(1932-)の「子供のように」。印象的なフレーズが執拗に繰り返され、たまに子供を模したと思われる奇声が飛び交います。テキストの内容がわからないので、いまいち作曲の意図が読みづらく、できれば歌詞の内容などが知りたいと思いました(残念ながら歌詞カードはついていなかった)。音楽的に印象深い響きが個人的にはあんまり感じられなかったのですが、かなりテキストに依存していると思われる曲の展開に面白みがあるのかもしれません。

今回北欧の聞いたこともない^^;現代作曲家の曲を聴いて、今を生きる作曲家の世界にいろいろ触れたことは今回の演奏会の一番良かったことだと思います。スウェーデン放送合唱団のこういった難度の高い合唱曲をこなすテクニックには素直に素晴らしいと感じました。しかし、やはり合唱団である以上、もっと「歌」の領域で勝負した曲を聞きたかったし、バッハやモンテヴェルディの曲で私を感動させてほしかったというのが正直なところです。
席のほうは空席も多かったのが残念。もっともっと多くの合唱愛好家がこういった演奏会に足を運んでくれるようになったらいいのですが。


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