気になる作曲家 デュリュフレ篇(01/9/1)


よくよくこの作曲家の名前をカタカナで見ると、実は日本人にはかなり発音しづらい名前ですね。私など、話しているときはたいてい「ディルフレ」と言っちゃってますけど、きっと外国人には通じないような気がします。本当なら、きっとフランス語っぽく口をすぼめて言わなければいけないのでしょう。
さて、このデュリュフレというフランスの作曲家、一般にはどれだけの人が知っているものなのでしょうか。
合唱人なら「レクイエム」があまりに有名で、これだけでこの作曲家の名前を知っている人も多いと思います。かくゆう私もこの「レクイエム」しか知りませんでしたが、たまたま、今日行ったコンサートでミサ曲「クム・ユビロ」という曲を初めて聞き、いまこれを書こうと思って、楽譜棚から昔買ったデュリュフレのモテットの楽譜を引っ張り出したところ。そして、これが現段階で私の知っているデュリュフレの音楽の全てです。

実はこのデュリュフレ、極めて寡作な作曲家なのです。
作品には作品番号がつけられているのですが、デュリュフレが作品番号をつけたのは全部で14作品。生没年は1902〜1986とかなり長生きしているわけで、この作品数では私の感覚ではとても作曲家とは言えないくらいです。残念ながら、デュリュフレの生涯について詳細に調べたわけではないので、この作曲家がどんな生活をしていたのかはわかりませんが、いわゆるバリバリの作曲家という感じではなさそうです。
しかし、それにしては、彼の「レクイエム」の音楽は素晴らしすぎるのです。これが片手間で作曲をしていた人の手によるものとは思えないくらい美しい音楽なのです。
私がいくら言葉を尽くそうとこの音楽の素晴らしさを伝えることはできないわけで、まだ聞いたことのないかたにはまず聞いてください、というしかないのですが、一つだけデュリュフレの声楽曲の大きな魅力を言うとすれば、それはグレゴリオ聖歌を主題にしているという点が挙げられます。もちろん、一般の人からすればグレゴリオ聖歌は馴染みのあるものとは言えません。しかしだからこそ、調性音楽以前のエキゾシズム溢れる旋律や、それを現代的拍節感に移植したときの妙な字余り感(これが変拍子となって現われる)が、イイかんじに聞こえてくるのです。この旋律の幻想性と、近代風のオーケストレーションが実にうまく組み合わさったのがこの「レクイエム」なのです。

ちなみに、さっき聞いたばかりのミサ曲「クム・ユビロ」は女声合唱とオーケストラの曲ですが、合唱は実は単旋律で声部が分かれません。しかし、基本となるモチーフはもちろんグレゴリオ聖歌、そして、オーケストレーションもまさに「レクイエム」のそれで、これもまた美しい曲でした(ただし、「レクイエム」と雰囲気が似すぎているような感じもしますが)。

さて、それで楽譜棚から引っ張り出したデュリュフレのモテットですが、こちらはアカペラで、デュリュフレの最もコアな和声感を窺い知ることができます。実際、音を出してみると、密集和音とその音のぶつかりぐらいがなかなか個性的なのです。しかも、それがプーランクのような刺激的な感じがしないのは、和声というより各パートの旋律の流れを重視しているからなのでしょう。
こういった美的感覚は私の趣味ととても近いもので、そう思うとデュリュフレにはもっともっとアカペラ合唱作品を遺してもらいたかった、とちょっと残念な気持ちにもなるのです。


inserted by FC2 system