CUBASE VST導入(01/8/11)


先週も書いたように、私の作曲環境はMIDIと切っても切れない関係にあります。
考えてみれば、作曲家にとってこんなに便利な環境はありません。例えば、オーケストラの曲を書いても、自分の作業部屋でオーケストラを鳴らして音を確認できるのですから。もちろん、本物とは違う、という意見もあるでしょうが、ピアノを弾きながら実物の音響を想像してオーケストレーションをしていくより遥かに実物が想像しやすくなるのは確かですし、演奏上の効果もある程度のシミュレーションができます。しかし、だからこそ、MIDIも何も無かった時代にあれだけの名作を残してきた大作曲家はやはりスゴイ、ということも実感するわけです。
こんなやり方は邪道だ、という人もいるでしょう。しかし、私は趣味でこのような作曲をしているわけで、何を使おうと面白いものが出来ればいいというスタンスですし、大作曲家より音響の想像力が劣ると言われても、これはおっしゃる通りとしかいいようがありません。それより限られた時間で作業を行うために、最大限の効率をコンピュータに求めるほうが、私にとって自然なことなのです。

もう一つ、音楽の作業がコンピュータによって改善されている大きな仕事があります。それはコンピュータ浄書です。すでに、大手の出版社でも版下は、手書きでなく(職人芸的な浄書のプロというのもいたのですが)コンピュータ化されていると聞いています。また、作曲家自身も現在ではかなりコンピュータ浄書を使うようになってきました。
人に見せるための浄書作業を手作業でやったことのある人なら、このコンピュータ浄書のありがたみが身にしみてわかるはずです。繰り返し部分をカットアンドペースト出来るとか、簡単に移調が出来るとか、フルスコアからパート譜が簡単に出来るとか、そして何より音が確認出来るとか、いいことはたくさんあります。あとは、現代音楽的な記譜とか、つかいこなすための知識とか、そういう問題をクリアするだけでしょう。

これまで私は10年来、MacでPerformerというシーケンサと、同じ会社から出ているComposers Mosaicという浄書ソフトを使っていました。ところが、昨年パソコンを買い替え、メインをWindowsにしてしまって以来、サウンドカードにおまけでついていたCakewalkというシーケンサを使っていたのですが、これが何とも使いづらい代物で、ここ1年くらいシーケンサと浄書ソフトを一気にWindows環境で整えたいと考えていたのです。今やMacも浄書のためだけに使っているような状態でしたから、ここらでMac環境を切り捨てたいと思っていたのでした。(このあたりの関連談話:MacかWinか(99/10/17),パソコン購入(00/1/17)
ということで私の出した結論は、MIDIシーケンサとして充分なスペックを持ちながら、浄書機能も十分使える Steinberg社の CUBASE VST です。今、この手のソフトはMIDIだけでなくオーディオも扱うようになり、音楽製作環境としての機能が非常に充実しているのですが、私自身はオーディオを扱うつもりはないので(MTRも買ってしまったから^^;)はっきり言ってこのソフトはオーバースペックではあります。しかし、そこらの安いシーケンサはやはり痒いところに手が届かないことも多いと思うので、MIDIシーケンサとしても長い歴史を持っている CUBASE ということにしたのです。ちょっと心配していた浄書のほうも中々のもので、合唱楽譜なら全然問題ないレベルで出力できます。

問題なのは、その操作感。
多機能だけに、ちょっとしたエディットでも今までのシーケンサと同じような操作感で使えなかったりします。楽譜機能とMIDI機能が一体化しているので、両方のデータがしっかりリンクしているのは嬉しいのですが、MIDI上でのエディットと楽譜上での表記を両立させるために、非常に細かい設定(あるいは気を使う設定)をせねばならず、ほんの一つ設定を間違えただけで楽譜がぐちゃぐちゃになることもあります。ドイツものらしい、頑固で極めて論理的思考を要するソフトです。しばらく、このソフトをつかいこなすのに時間がかかりそうです。


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