北条時宗は少女マンガか?(01/6/2)


今年も例年通りNHK大河ドラマを毎週欠かさず見ています。
今回の北条時宗、まさに主人公が一人であり、この主人公に肩入れしたものの見かたで物語が進行していきます。以前もちょっと書いたように、去年の葵のような主人公が特定されない面白さというのがなくなり、典型的な「主人公=正義の味方」的作りになってしまいました。
しかも、今回はそれをことさらに強調しているような感じがします。あのドロドロした陰謀渦巻く鎌倉幕府の中にあって、実際の北条時宗はもっとしたたたかなやり手だったと私は思うのですが、なんとも情熱一筋、青臭いほどの正義感で突っ走るこのストーリーの展開には歴史ドラマとしてのリアルさが少し欠けているような気がしてなりません。そして、超好青年的な主人公の配役がさらにそれを助長しています。
そして何といっても、時宗のライバル時輔(ときすけ)のキャラクターが一層作為的です。毎週のように、「こんなクールな鎌倉武士がいるんかー」と一人突っ込みを入れています。あの表情だけで物語るクールさは、完全に現代的。それだけに、脚本家や製作側のある種、挑戦的な作りを感じさせます。この時輔、いろんな意味で主人公と好対照を成しています。策士としての能力抜群であり、一匹狼であり、厭世的な理想論者であり、人に弱みを見せない冷たさを持ちます。そして、こういった主人公とライバルとの対比の仕方は、まさに少女マンガ的ではないか、とふと感じたのです。
特に長編物の少女マンガなら、なんとなくこんなキャラクターの配置って想像できませんか?情熱で人を動かすタイプの主人公と、知的で冷徹ながら独特の理想を持つライバル。しかも、完全な敵対でなく、要所要所でお互いをサポートするといったような。

そう考えると、このドラマの各キャラも全て少女マンガ的に思えてきてしまいます。
時宗の正室、祝子(のりこ)は純粋で一途に主人公を想う健気なタイプ。ところが主人公は、ときにその想いが重みになってしまい、自由奔放で男勝りな桐子(とうこ)に惹かれる。桐子は想ったこともズバズバ言うし、言葉づかいも荒いけれど、ちょっとした折に女らしさをふっとだしてしまったりします。
博多の商人謝国明(しゃこくめい)と佐志房(さしふさし)との間の男の友情も、なんか少女マンガ的。一見二人とも渋い役に見えるものの、セリフとかが少しクサイ感じ。
主人公を支える、安達泰盛、北条実時もそれぞれ、一途な直情行動型、冷静な知性型と好対照をなしていて、主人公に仕える参謀としてのアニメ的キャラ配置をちょっと感じたりもします。

もちろん、だから面白くない、というわけではなくて、作為的なキャラ配置で少しでも多くの人に大河ドラマを見てもらおうというのが今回のNHKのやり方だし、そう理解した上で見るなら、アニメ番組をみるようなつもりで見るのも悪くないと思います。
それに、今回取り上げた鎌倉時代の中期は、なかなかテレビドラマで見る機会も少なく、いささか私にとって影の薄い時代であったのですが、鎌倉幕府が御家人の微妙で危うい力の均衡のうえで成り立っていることを知るよい機会でした。一見戦乱がないように見えて、やはりダイナミックな歴史の一ページなんですね。
今回はテーマ音楽も圧巻です。これは面白い!と素直に思いました。若手でコンピュータミュージックなどをやっている人なんですね。

最後に、「蒙古襲来まであと○○日」というのは完全に宇宙戦艦ヤマトのぱくりで、こんなところにもアニメ嗜好が表れています。



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